50代からのリフォームのコツ──暗い、不便、狭い…を一気に解消
イラストレーション・中村久美 文・新田萱子
「30代で購入した住まいの設備が老朽化し、子どもも独立するなど、50代は家の状況が変化するとき。ここでリフォームを考える人は多いですね」
とは、多くの個人宅の改修を手がけてきた建築士の渡辺ノリエさん。
「機能性もですが、何より居心地のよさを求めるのがこの世代の特徴です。移動も手入れも簡単な、コンパクトなキッチンを望む声も多数。家事のやり方やインテリアの好みが確立している世代なので、それをどう落とし込んでいくかも大切な要素です」
よく聞かれる要望や悩みをもとに、昨今のトレンドと、リフォームプランニングのコツを教えてもらった。
POINT1 コンパクトで回遊できる、オープン&縦型レイアウトに
「まず多いのが、狭くて熱がこもりやすい閉鎖型のキッチンを、開放的に変えたいという要望です」
キッチンを囲む壁を払い、隣接する部屋もつなげて広いLDKにするプランが人気だという。
「その上で配管事情が許せば、回遊できるキッチン配置に変えるとより使いやすい。シンクとコンロを2列に分けるⅡ型キッチンは狭い空間を有効に使え、部屋に対し縦長に配置すれば家事動線も抜群。一般的なシンクとコンロが横並びのⅠ型キッチンも、壁から離すだけで使い勝手がよくなります」
POINT2 主な収納はキッチン本体でまかなう。パントリーは小さくていいのでぜひ
収納が少ないことも常に上位に上がってくる悩みだが、
「いまのシステムキッチンは収納力が高く、少人数分の食器や調理器具なら、設備を入れ替えればまかなえるケースがほとんど。手の届きにくい吊り戸棚や大きな食器棚は、防災の面からも減っていく傾向にあります」
反対に、家族の人数が減ってもぜひ確保したいのがパントリー。
「水などの重たいものや、ストック食品の置き場として必須。小さくていいので、台所のデッドスペースや廊下の収納などを利用して捻出することをおすすめします」
POINT3 安⼼&⼿⼊れが楽な最新設備があれば、年齢を重ねても楽しく台所に⽴てる
設備の使いやすさも、準シニア世代にとっては気になるところ。
「とくに手入れのしやすさを重視する人は多く、傾斜や素材に工夫があって汚れがつきにくいシンクや、排気ファンの掃除が10年間不要なレンジフードなどが人気です。手首に負担のかからないタッチレス水栓や、燃え移りの心配のないIHコンロも安心できるとしてリクエストが多いですね」
各メーカーで開発が進んでいるので、比較検討したい。
「年齢を重ねてからの導入だととまどうことも。早めに使い始めて、慣れておくのが得策です」
POINT4 リフォームの三大コストを知って、メリハリのあるお金のかけ方を
改装費用で一番ボリュームを占めるのはキッチン本体、次いで場所の移動に関わる工事、その次が棚などの造作工事だという。
「三大費用のうち、どこにお金をかけるかを考えておくとプラン作りに役立ちます。たとえばキッチンのグレードを少し高くしたいけれど予算オーバーというなら、棚の造作を半分DIYにしてコストを抑え、そのぶんをキッチンに回すなどの工夫が考えられる。メリハリのあるお金の使い方も、リフォーム成功の大事な要素です」
『クロワッサン』1151号より
広告