【料理家、HÅN店主・口尾麻美さんの台所】物を集めたい、飾りたい──すべてオープンで効率的な台所
撮影・川村恵理 文・梅原加奈
まるでインテリアショップか民芸店か。壁や棚にディスプレイされた世界各国の品々に圧倒させられる、料理家の口尾麻美さんの台所。
「旅先で出合ったものがほとんどでひとつずつ愛着がある。気に入ったものしかないから、しまい込まずに出しておきたい」と話すとおり、台所のリノベーションをする際にもフルオープンにすることを決めた。キッチンの収納には引き出し類や扉はついておらず、カラフルな器や見たことのない異国の食材がぎっしりと並ぶだけでなく、天井や壁にも道具やカゴが大胆に吊るされている。
「イメージは、中東などのバザール。異国情緒ある雰囲気が好きで」
リノベーションの際には、狭かったキッチンを広げるだけでなく、天井まで高さのある棚を2カ所に設置。それもまた見せる収納だ。これが実は効率的でもあるという。
「扉をいちいち開け閉めするのも手間だし、全部が見えていたほうが、物が動かしやすく、全体を把握できる。置き場所を常に変える工夫がしたいからこそ、オープン収納のほうが効率的だと思います」
シンク下には使用頻度の高い食器と調味料を厳選
シンク下の収納も扉はつけず。見えるからこそ無駄なくきれいに整理できるものだけを厳選する。「日常使いする食器類は手前に並べ、調味料も必要なときにさっと取り出せるという動線を考えた上での工夫です。見えやすいので残量やストックの管理も楽」
出窓もグラス棚に!? 固定観念に縛られない
産地別や色別、素材別など気分によって食器類の配置換えをするが、ガラスの器やグラスは、この出窓が定位置に。「透明なものは明かりを遮らず、光が当たる角度で見え方や表情が変化して眺めていて楽しい。日常を豊かにしてくれるディスプレイは大事にしています」
つっぱり棒で“吊るしスペース”を作る
デッドスペースを有効に使う吊るしのアイデア。「高い位置には軽くて、使用頻度の低いもの。低い位置には日常的にパッと使いたいものを。吊るしも可視化が大事。中に物を入れるなら網状の袋など、中身が一目でわかるものを選ぶと、使い忘れを防げます」
置き場所を自由にしやすい“ガチャ棚”導入
キッチンから続くリビングの奥に、オープンシェルフのスペースがある。「物が多いからこそ定位置を作らず、常に動かすことで全部のものを使うようにしています。高さの調整が自在な“ガチャ棚”にして、置きたいものを置けるように工夫しました」
『クロワッサン』1151号より
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