吊るす、浮かせる、引っかける…垂直収納はモノを捨てずにスペースを広々と確保できる。
手軽な収納グッズを使って、壁面を収納スペースに変えるアイデアを紹介します。
撮影・黒川ひろみ スタイリング・矢口紀子 文・浅沼亨子
吊るす、浮かせる、引っかける… 垂直に収めれば、水平面は広々と。
「吊るしたり、浮かせたりして空間を縦に使う“垂直収納”はおすすめの収納アイデアのひとつです。フックやタオルバーといった小さな収納グッズを壁に取り付けるだけで、収納スペースが生まれます」と、収納ライターのおさめますよさん。
“垂直収納”のよさは、家の中を広く使えること。家具や引き出しケースを置くのと違って床面積が変わらないので、居住スペースを広々と確保できる。
フック一つで、動線上の置きたい場所に収納を作れるのも大きい。手の届きやすさや目の留まりやすさなど、よりパーソナルな収納も可能だ。そして、さっと使えて、さっと戻せるのも大きなメリット。
「壁や扉、家具や家電の側面、天井に目を向ければ、使いやすい収納はもっと作れる。ものを捨てなくても部屋が片づきます」
木製有孔ボードで散らかりがちな小物が収められたデスク周り。
ものがない広々としたデスクは、それだけで仕事のやる気が起こるもの。とはいえ、文房具やケーブル類は出し入れが頻繁で、デスクに散らばりがちだ。
「近くの壁を利用し、収納スペースを作りましょう。文房具やケーブル類は種類が多いので、分類して小分けに収納できるよう、面積のある有孔ボードを使います」
アイテムに合ったフックやリングを装着し、ものはなるべく重ねず収納する。重ねる場合は、使用頻度に差をつけ、奥に頻度の低いもの、手前に頻度の高いものを引っかける。有孔ボードは、収納の改善がしやすいのも魅力。使いにくければ、フックの数を増減する、差し替えて場所を移動するなどすればいい。
ウォールナット材のプライウッド(成型合板)で、木の温もりが感じられる。壁に石膏ボード用のピンとフックを取り付け、ボードを引っかけるため、工具は不要だ。別売りのパーツも充実。
フック+布バッグで形状違いのグッズをまとめて床すっきり。
家族が過ごすリビングのソファまわりは、ものが集まりやすい場所。TVのリモコン、本やゲーム機、健康グッズ、羽織りもの……。あっという間に収拾がつかなくなる。
「くつろいでいるときに『片づけて』と言っても、なかなか腰が上がりません。手を伸ばせば届く壁に収納場所を設けておくと、散らかりにくくなりますよ」
フックなら、好みの高さに取り付けられて好都合。そこに、大きめのエコバッグや持ち手付きのかごをぶら下げる。形が異なるものをざっくりと入れられ、広い口は出し入れがスムーズ。ハンドルは片方外しておいても。
「とくに冬は、リビングで上着を脱いだり、ひざかけを使ったりする機会が増えるので、1つあると便利です」
インテリアの雰囲気を壊さない木製のフック。石膏ボードの壁に取り付けられ、耐荷重も2㎏あって安心。抜き穴が小さいので、壁を大きく傷つけることもない。ほかに、オーク材のライトグレーや、ウォールナット材もある。
タオルバーでお出かけ小物を吊り下げて収納。
「家の出入り口である玄関は、自分で思うよりものが置かれる場所。だんだん狭くなって、傘立てすら置く場所がないと悩んでいるお宅をよく見かけます」
おさめさんによると、玄関は〝垂直収納〞にぴったりの場所だそう。たたきに靴を置いたり、掃き掃除をしたりするため、家具を置くとじゃまになるからだ。
「傘や犬の散歩用のリードなど、引っかけられるものが多いので、タオルバーを使ってみてはいかがでしょう。S字フックをぶら下げて、ものを吊るすこともできます」
ハンギングプランターやエコバッグを一緒に使えば、収納の幅が広がる。衛生用品や雨具、スリッパなどごちゃつきがちなものを収められ、玄関がよりすっきりする。
機能的な突っ張りラックで調理スペースが広々と。
調理中のストレスは、収納が原因のことが多い。調理台が調理道具で埋まったり、引き出しが満杯で取り出しにくかったり……。
「改善する手段のひとつが〝垂直収納〞です。キッチンには壁、吊り戸棚、レンジフードなど、ものを吊り下げる場所がたくさんあります」
たとえば、写真の調理台と棚の間に突っ張るラック。調理台を広く使えるうえ、目の前に収納することでまめに片づけられる。もちろん使うときも、さっと手に取れ、調理がスピーディーだ。
「ただし、むき出しで置かれるので、油やホコリが付着しやすいことも。使用頻度の高いものを厳選して収納するようにしましょう」
棚や吊り下げバーを備えたマルチラック。支柱の奥行き2.2cmあれば、取り付けられる。フックは引っかけ部分が狭くなっているなど、外れにくい工夫がうれしい。
ラダーラックで服のコーデを見える化収納。
「服は〝使う〞より〝収める〞意識が強くなりがちで、つい詰め込んでしまう。すると着替えるとき引き出しをかき回すことになり、クローゼットが雑然とします」
収納に余裕をもたせるために、クローゼット内を見直してみよう。たとえば、壁に立てかけるラダーラックなどを使えば、ごちゃつきの原因を取り除ける。
翌日身に着けるトップスやボトムスをまとめてかける場所を作る。コーディネートをすませておけば、あわてて引き出しをかき回すこともなくなり、クローゼットはすっきり。
「ラダーラックは何をかけてもOKにすると、ものの吹き溜まりになりやすいので、〝明日着ていく服〞など用途を決めて使いましょう」
付属の六角レンチでパーツをつなげる組み立て式。使わないときは解体できる。上部の曲がりが安定感を生み、足元のスペースが少なくてすむ。先端のシリコンカバーで、壁や床が傷つきにくい工夫も。
マグネットボードで、紛失しがちな紙ものを壁に貼り付けておく。
毎日のように届く郵便物やDM。「なかには重要なものがあるかも?」と思うと、すぐには捨てられず、どんどん溜まっていく。
「紙ものは積み重ねると行方不明になり、探すのを諦めがちです。それを防ぐために、家族の目が留まる壁に掲示板を作ってみては? トイレの壁も候補の1つです」
セールや個展の案内状、家族宛のハガキ、クーポン券など、大事なものは壁に貼り付けるルールに。なくさずにすむうえ、封を切って中身を見る習慣をつけるのも狙いだ。成功させるには情報の更新が肝要。貼り替えやすくするため、マグネットボードとマグネットを使う。紙はなるべく重ねないのが、情報管理のコツだ。
重量約320gの軽いマグネットボード。壁の材質や貼り付けるものにもよるが、画鋲や両面テープでも固定が可能だ。幅約60cmとコンパクトなので、壁のすき間を有効活用できる。
壁につける棚を寝室のサイドテーブル代わりにして掃除を楽に。
携帯、目覚まし時計、エアコンや照明のリモコン……。ベッドに持ち込むものは以外と多く、サイドテーブルが欲しいところ。ところが、狭い寝室ではベッドを置いたらスペースに余裕がないのが実情だ。
「壁に取り付ける棚なら、壁面に収納スペースを作れます。適度な収納量で用途が限られ、ものを自然に厳選できます。また奥行きが浅いため、置くだけで整列しますよ」
おさめさんによると、ものが置けるトレーや棚はサイズ展開が豊富で、用途で使い分けるといいという。サイドテーブル代わりに使うならロングタイプ、携帯の充電器や手指消毒液を置くならショートタイプ。収納を浮かせれば床が広々とし、掃除もしやすい。
ハンギングバスケットでハンカチなどの小物を手に取りやすく。
ハンカチやスカーフなどの小さなアイテムは、引き出しにしまうと、お目当てを見つけにくいもの。朝、慌てて探すことも多く、プチストレスになる。
「そんな場合は、ハンギングバスケットなどを使って〝見える化〞しましょう。クローゼットのハンガーポールに吊り下げ、かごに入れたり、フックに引っかけたり。見つけやすく、手に取りやすいですよ」
洗濯後の収納もラクで、引き出しの上に〝積んどく〞状態を防げる。ハンガーポール専用の吊り下げ式小物収納ホルダーもあるので、上手に採り入れたい。
「バッグやポケットの中身を収納しても。天井に留めたフックから吊るせば、どこでも使えるアイデアです」
ドライフラワーを飾る吊り下げ式のワイヤーバスケットで、軽いものが向く。フックにはスカーフ、ネクタイ、ベルト、アクセサリーなどをバランスよく収納したい。
『クロワッサン』1103号より
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