料理しながらおしゃべりできる。ウー・ウェンさんの居心地のいい台所。
撮影・吉澤健太 文・斎藤理子
家族が集まる場所だから、楽しい空間に。
「8年前にこの家に引っ越した時、台所をどのようにするかを一番考えました。子どもたちが大きくなって、食事の時間もバラバラ。家族が全員で食卓を囲むことも本当に少なくなってしまって。わずかな時間しか一緒にいられないから、料理しながらおしゃべりができる空間にしたんです」
そう語るウー・ウェンさんが選んだのは、カウンターのある広々としたオープンダイニングキッチン。台所を孤立させずオープンスペースにすることで、家族との時間がより濃密になったという。
「台所は、自分のライフステージに相応しいものにしていかないと、使い勝手が悪くなります。台所は私にとっては戦場。だから、自分が少しでも楽になる工夫が必要です」
キッチンカウンターの高さは、背が高い自分に合わせて調整。それまでのカウンターは低すぎて屈む姿勢が多かったために腰痛になっていたけれど、それも解放された。
料理中に立ちっぱなしがつらくなってきたら、すかさず高さが調整できる椅子を使用。この椅子はイタリア製で、もう20年も使っている。反対側からだと立っているように見えるのが気に入っているそう。
「料理を担う人が一番長い時間を過ごす台所。だから、疲れずに楽しく過ごすための工夫というのはとても大事なことです。使いやすい高さのカウンター、道具を取り出しやすい引き出し、調味料の置き場所など、とにかくどうすれば楽になるか考えました」
どんなにシンプルにしたくても、ものはどんどん増えていくとウー・ウェンさん。だから、キッチンカウンターと背後の壁面はすべて収納にして、どこに何があるか、すぐわかるようにしている。
頻繁に使う調理道具や食器類は、動線を考えて、手を伸ばしたり体をちょっとひねれば届く位置に。あちこち移動しなくても、必要なものがすぐに取り出せるから体も楽だという。
「醤油、みりん、酒、酢、油といったいつも使う基本の調味料はしまわないで、コンロの横に出しっぱなし。しまって出してまたしまうという面倒くさい手間が省けていいですよ。まな板も、カウンターに立てかけておくの。そのほうがよく乾燥するし、使うときにパッと取り出せるでしょう? 毎日使うものはしまわなくていいと思うの」
胡麻は料理によく使うので、探さなくて済むようにカウンターに出しておく。塩・胡椒や蜂蜜、海苔なども同様。
出しっぱなしだと、ついごちゃごちゃした印象になりがちだが、ウー・ウェンさんの台所はすっきり。その秘訣は、外に出しておく瓶や容器は、似たような見た目で統一することだそう。
「バラバラな容器だと雑に見えるから、なるべく統一するようにしています。わざわざ移し替えるんじゃなくて、買う時に意識して同じような見た目の容器で揃えるんです。小麦粉のような袋ものは、プラスチック容器に移し替えたほうが見た目がスッキリしていいですね。同じ形の容器を引き出しに並べています」
コンロの横に置いた調味料と下の引き出しに収納した調味料。これで、コンロの前に立ったら移動することなく料理に集中することができる。
「追熟が必要な果物やトマトなどは、カウンターの上。なんでも冷蔵庫に入れる必要はないの。ここは、私の熟成庫って呼んでいます」
ここに集まる家族のために、家で一番広いスペースを取ったというウー・ウェンさんの台所には、今日も家族の笑い声が溢れている。