暮らしに役立つ、知恵がある。

 

体内時計研究の専門家に聞く、健康を守るための朝昼夜の習慣。

おうち時間が長くなったことで生活リズムが乱れ、体調を崩したり、気分が落ちこんだりすることも。
でもそれは、毎日のちょっとした習慣を見直すことで、劇的に変化するのです。
まずは朝昼夜という一日の流れをどう整えるべきか、一緒に考えましょう。

撮影・小川朋央 スタイリング・高島聖子  ヘア&メイク・大谷亮治 モデル・希実 文・石飛カノ

体の中から若くなる、カンタン健康習慣。

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【朝】

朝の光と朝食で一日のリズムを作る。

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起きる時間を決めて日の光を浴びよう。

地球上の生き物には24時間周期の生理機能が備わっている。たとえば体温、血圧、ホルモンの分泌などは地球の自転リズムに合わせて増減を繰り返す。これがいわゆる「体内時計」。日々健康に過ごすための第一歩はまず体内時計リズムを整えること、これに尽きる。

「体内時計をリセットする因子は朝の光と朝ごはん。朝の光は脳にある主時計をリセットし、朝ごはんは末梢の時計をリセットします」

と、体内時計研究の専門家、柴田重信さん。前夜、何時に寝ようと朝同じ時間に起きて太陽の光を浴びれば時計のリズムは整うという。

「“早寝早起き朝ごはん”とよく言いますが、正しい順番は“早起き朝ごはん早寝”です。起きる時間を決めて光を浴びて朝食を食べれば、約1週間で体内時計は正しいリズムを刻みだします」

タンパク質を一品プラスする工夫を。

光を浴びた後の朝食に必須なのは、主食の糖質とおかずに含まれるタンパク質。

「糖質を摂ることで膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンが体内時計のリセットを促します。体質的にインスリンが効きにくい人は、タンパク質を摂ることで産生されるインスリンに似た働きをする物質で時計を合わせることができます」

朝食でタンパク質を摂る健康効果はほかにもある。

「筋肉を維持するには体重1kg当たり1gのタンパク質が必要です。体重60kgなら1食につき20gになりますが、朝はどうしてもタンパク質が少なめ。朝のタンパク質量が多い人ほど握力が強く、筋肉の合成率が高いことが分かっています」

40代以降はとくに筋量の維持が大事。納豆、牛乳、ゆで卵など5〜10gのタンパク質をオンする習慣を。

体内時計研究の専門家に聞く、健康を守るための朝昼夜の習慣。

朝食は和食を食べるのがおすすめ。

シリアルに牛乳をかければ糖質もタンパク質もカバーできるけれど、朝食のベストチョイスはなんといっても和食。

「約3000人を対象にした調査では朝食で和食を摂っている人のほうがタンパク質の補給量が多いことが分かりました。また、因果関係は不明ですが、和朝食の人は早寝早起きという結果も出ています」

ごはんを炊いたり具だくさんの味噌汁を作ったり魚を焼いたりという手間を考えれば、朝寝坊してはいられない。当然早起きの習慣がつくとも考えられる。

2番目に早寝早起きなのは、和食と洋食を半々くらいの頻度で食べる人、次に早寝早起きなのは毎日洋食を食べている人、最も遅寝遅起きなのはシリアル派だったという。

朝一番の健康食は和食に勝るものなしと言えそうだ。

【昼】

日中はしっかり食べてしっかり動く。

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昼食は野菜の副菜をマストに。

塩辛い食べ物ばかり口にすると血圧が高くなりやすい。これは塩分=ナトリウムを必要以上に取り入れると、体液の浸透圧を一定に保とうと血液中の水分が増えて血液量が増し、血管に圧がかかるから。

「個人それぞれに合わせ、朝昼晩同量のナトリウムが含まれた食事をして、どの時間帯が高血圧のリスクに繋がりやすいかを調べてみました。すると、昼食でナトリウムを摂ったときのリスクが高いことが分かったのです。原因は昼食のカリウムが少ないことだと考えられます」

カリウムは体内の余分なナトリウムを排出してくれるミネラル。ほうれん草や小松菜といった葉ものやニンジンなどの野菜に多く含まれている。昼食、とくに外食ランチのひと皿メニューではどうしても野菜不足になりがち。意識的に野菜の副菜をプラスしたい。

体内時計研究の専門家に聞く、健康を守るための朝昼夜の習慣。

昼食は忙しくても絶対に抜かない。

忙しさでつい昼食を食べ損ねたり、エナジードリンクで簡単に済ませたり。昼のこの選択がその日の夜の血糖値上昇を招くことになる。

「同じものを食べても朝は血糖値が上がりにくく夜は上がりやすいといわれています。夜寝ている間、膵臓は休んでいるので朝食後には血糖値を下げるインスリンが効きやすく、夕食後は膵臓が一日働いた後なのでインスリンが効きにくいのです」

それなら昼食を抜けば膵臓も休まり、夕食後にはインスリンが効きやすくなるのでは?と思いがち。でもこれは逆効果で、高血圧になる。

「昼を抜くとカラダは体脂肪を分解してエネルギーを作ります。すると血中に遊離脂肪酸が増え、インスリンを効きにくくします。夜間は絶食時間をできるだけ長めにし、エネルギーが必要な日中にはしっかり食事を摂ることが大切です」

筋トレや有酸素運動は夕方がベスト。

24時間周期の生理機能から考えると、一日のうちで最も運動に適した時間帯は夕方。というのも、心臓や肺の働きが活発で体温がピークになり、筋肉の柔軟性が最も高いのがこのタイミングだから。

「夕方は筋肉の合成を高める運動に適した時間帯なので、スクワットなどの筋トレを取り入れると効果的です。朝食でしっかりタンパク質を摂っておくと、この時間帯の運動によって筋肉がより合成されやすくなると考えられます」

筋トレだけではなく、体重コントロールのための有酸素運動も、やはり夕方に行うのが最も効果的という話。ウォーキングなどの軽めの運動であれば、朝の光を浴びながら行う手もあり。でも、カラダづくりのための本気の運動は15時から19時くらいまでのタイミングで行うのがおすすめだ。

【夜】

食事を早めに済ませてゆっくり休息。

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夕食の時間を1時間でも前倒しに。

日中の活動時は朝食や昼食でエネルギーをしっかり摂る。そのかわり、夜寝る前の夕食のエネルギー補給は控えめに。夕食のボリュームが一番多いという人は、一日の食事を10割として夕食を0.5割減らし、その分を朝食にプラスする。

さらに、できるだけ夕食の時間を前倒しにすることも、とても重要。

「実験では8時間以内に一日の食事を済ませると夜間の高血糖のリスクが減り、体内時計が整うという結果が出ていますが、現実的ではありません。たとえば朝7時に食べたら夜7時に済ませるという12時間以内の食事の摂り方がおすすめです。夜の9時に夕食を食べるという人は30分でも1時間でも前倒しにして夜間の高血糖を防ぎましょう」

朝食から計算して12時間を超えないタイミングで「ごちそうさま」を口にする習慣を。

スマホやPCなどブルーライトを避ける。

光は体内時計の調整に大きな影響を与える条件。波長の短いブルーライトを日中浴びるとカラダは活動的になる。起床後に光を浴びるといいといわれるのはこのため。

一方、夜間にスマートフォンやPC、LED照明のブルーライトを浴びるとカラダは昼と勘違いして体内時計が後ろ倒しになり、眠れない、朝起きられないといった不調の原因に。夜間のスマホやPCの利用は最低限にしたい。

夜はデジタルデトックスでもっぱら運動をする、という人も要注意。

「ただでさえ夜の運動は体内時計を夜型に傾けます。夜、ジムに行ってブルーライトのもとで運動すると、なおさら時計は後ろ倒しになります。それなら出先から家に帰るときに走って帰り、家では間接照明の下でリラックスして過ごすほうが断然いいと思います」

筋肉不足の人は寝る前に低脂肪タンパク質を。

筋肉が少ない痩せ型の人は、夜食でタンパク質を補給するのも健康維持のひとつの方法。

「夜寝ている間にオートファジーが起こって筋肉のタンパク質が分解されるのを防ぐためです。40代以降は筋肉の維持が大事になってくる年齢層。朝のタンパク質が筋肉の合成を促すためのものとすれば、夜のタンパク質は筋肉が減るのを防ぐためのものです」

オートファジーとは細胞内にあるタンパク質を分解して新しく生まれ変わらせる仕組みのこと。飢餓状態に陥ったとき自己消化して栄養を確保するためといわれているが、日常的にこの仕組みが働いていることも分かっている。

痩せ型体形で筋肉がつきにくい人は、夜寝る前の夜食として低脂肪ヨーグルトやアミノ酸サプリメントなどの補給を。

  • 柴田重信 さん (しばた・しげのぶ)

    早稲田大学理工学術院教授。薬学博士。

    健康科学に関する生体リズム研究の第一人者。近著に『食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門』(講談社)がある。

『クロワッサン』1066号より

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