ひとり遊びが上手な犬のサンデーくんと、料理家の小堀紀代美さんの暮らし。
撮影・竹内章雄
人と犬がこんなにも一緒に過ごせると知って、 夫と私の新しい暮らしが始まりました。
小堀紀代美さん
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サンデーくん(1歳)
料理家の小堀紀代美さんがサンデーくんを迎えたのはちょうど1年ほど前のこと。以前は黒いフレンチブルドッグを飼っていたが、そのモアナくんが死んでしまってからしばらく飼う気になれなかったと語る。
「モアナは喜んだり怒ったり、誰かが帰る時は小さな声で鳴く……。可愛い性格の犬でした。
12歳を超えてがんが見つかったけれど、手術をするには高齢で難しくて。最後まで穏やかに暮らせればと思いながら闘病する日々が始まりました。
毎日2回病院に行って、点滴して酸素を吸って。闘病させていることに疑問を感じつつも、やはり生きてほしいという思いで毎日過ごしていました。
そんなある日、モアナが酸素を吸いたがらなくて、朝から落ち着かなかったんです。それで、私はいらついてしまって。お願い、酸素を吸ってモアナ、っていう思いで……。でも病院から帰ってきたその日のお昼に、死んでしまったんです。
前の日まで手をつないでもう楽になってもいいよって思っていたのに、なぜ優しくできなかったんだろう。あれからずっとモアナに申し訳ない気持ちで、今も心が苦しい」
落ち込んだのは小堀さんだけでなく夫も同じだった。もともと大の犬好きだった夫。ずっと可愛がってきた犬の不在によって、夫の心にぽっかり穴があいたのをひしひしと感じたという。
毎日が日曜日のように幸せに生きてほしいと思いを込めて。
「この先犬を飼うことはもうないかも、と思っていたけれど、友人の愛犬を預かるようになってやっぱり犬との暮らしって温かいなあと思って。ネットで探し始めたら、サンデーに目が留まってブリーダーさんの所に会いに行ったんです。でもサンデーはブリーダーさんの顔を見ているだけで、全然愛想なし。すると、夫が一人の人に忠実っていいことなんじゃないの?と言って。確かにそうですよね」
犬も本当にそれぞれ性質や性格が違う、と小堀さん。
「サンデーは聞き分けがよくて、犬なのに諦めもいい。のんびりしているので、朝、こちらが起きてもまだ寝ていたりする。ひとり遊びも上手。こんな犬もいるんだ、と驚きました」
毎日2回の散歩は夫の役目。散歩帰りに近くのパン屋さんに行ったり、コーヒーショップに寄ってきたり、とゆっくり楽しんで帰ってくるのだそう。
「サンデーが来てから家が明るくなりました。夫も毎日楽しそうで、しばらく引退していた仕事も再開し始めました。
『Sunday&Park』というブランドを作ろう、と二人で話しているんですよ」
日曜日と公園。その名前には穏やかな一日と暮らしを楽しむという2つの意味を込めて、ペットグッズから、小堀さんが選ぶ調味料や道具まで含めたセレクトショップにする予定だ。
「今度の週末は、犬も宿泊可能な温泉に夫と私とサンデーで行く予定なんです。こんなことができるのも、サンデーが我が家に来てくれたおかげですね」
『クロワッサン』1056号より