正しい“温活”で、免疫力アップ! 医師が教える疲れない習慣。
体温の真実と、本当に役に立つ「温活」の方法を紹介します。
文・韮澤恵理 イラストレーション・松元まり子
体の温度
一言に体温といっても場所によって違います。大切なのは体の中心の深部体温。これを調節するのが手足や肌の皮膚体温です。
●頭寒
頭に熱をこもらせないという意味です。頭部を冷やすといいということではありません。発熱したり、のぼせたような状態は不健康です。暖房で首から上ばかり暑いとか、更年期による自律神経の乱れなどは要注意です。
●深部体温
脳や内臓など、体の中心部の温度です。外の環境に影響されにくい体本来の温度で、活動していて交感神経が優位なときには高く、眠っているときには少し低くなります。深部体温が下がると眠くなるのはこのためです。
●皮膚体温
外部に接している皮膚は環境で温度が変わりやすい部位です。手足のように心臓から遠い部分ほど室温などの影響を受けます。寒いと血管が収縮して熱を奪われるのを防ぎ、暑いと血管が拡張して熱を放散します。
●足熱
足は心臓から遠いので血行が悪くなりやすく、室温などの影響を受けやすい部分。これは、血液を送り出す力が落ちていたり、血管が詰まって流れが悪いせいかもしれません。温かい足になるように体調を整えましょう。
温めることで血流をよくして健康に。
人間には外敵と戦う免疫機能が備わっています。体温が上がったり下がったりすることで、すぐに大切な免疫能力が左右されるということはありません。
でも、体が冷えるというのは、心臓が血液を十分に送り出せていないとか、動脈硬化などで血管が詰まったりふさがったりして血液が流れにくくなっている可能性があります。
栄養のバランスが悪かったり、ストレスや自律神経のアンバランスが原因で、毛細血管が収縮したり、ゴースト化し、末端にうまく血液が届いていないという可能性もあります。
どれも不健康な状態で、それが疲れや病気の原因になります。冷えているから免疫力が下がるのではなく、冷える体はどこかに問題があると考えましょう。
冷えている人は、まず末梢血管に血液を送り込んで、今の症状を解決しましょう。同時に、冷えない体になるように、生活を改善するのが本当の免疫力アップです。
体の中から温める
食べ物や飲み物で胃腸を温めたり、血管を拡張したり、毛細血管を丈夫にするおすすめ3種を紹介します。
温かい飲み物
疲れているときは胃腸の機能も落ちているので、冷たいもので胃壁の毛細血管を収縮させると、ますます不調に。温かい飲み物は体の内側から温まるのでおすすめ。ポイントはノンカフェイン。コーヒーやお茶より、ハーブティーやホットミルクなどでくつろいで。
炭酸
炭酸ガスは血管から吸収され、毛細血管を拡張する働きがある。炭酸水は水に二酸化炭素が溶け込んだもの。胃粘膜から吸収されて血管を広げ、血流をよくして体温を上げる。胃をふくらませるので食べすぎによる胃のもたれを防ぐ効果も。
加熱しょうが
しょうがに含まれるジンゲロールは血管を拡張し、発汗作用があるけれど、冷えにつながる可能性も。
加熱するとショウガオールに変わり、血管拡張作用はそのままに、発汗による冷えを防ぐことができる。熱い飲み物に加えたり、煮たり焼いたりすると効果的。
体の外から温める
熱が逃げるのを防ぐには、外からもしっかり対処したい。
夏も冬も冷えがちな現代の生活に役立つ3つの理屈です。
運動
冷え防止には運動が一番だと知っていますか? その理由は筋肉量が増えると基礎代謝が上がるから。より多くのエネルギーが燃焼し、体を温める。また、下半身の筋肉量が増えると、血液を心臓に押し戻すポンプ力も増すので、血流が上がり、足の冷えにも有効。
炭酸風呂
入浴剤の中でも特に温め効果が高いのは発泡入浴剤。無数の泡に含まれる炭酸ガスが皮膚から吸収され、末梢血管に取り込まれると、血管壁から分泌される一酸化窒素が、全身をめぐって体を温めたりほぐしたりしてくれる。ぬるめの湯が有効。
腹巻き
手足が冷えると靴下や手袋を頼りたくなるけれど、効果的なのは実は腹巻き。お腹が冷えると全身の不調になるのは、内臓が冷えて機能低下を起こすから。
夏でも腹巻きで内臓を温かく保てば、温かい血液が全身に行き渡り、手足の冷えも体の疲れも防いでくれる。
『Dr.クロワッサン 免疫力を強くする、疲れない体のつくり方。』(2020年6月26日発行)より。