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階段を昇るときに息切れ・動悸がするように。更年期症状でしょうか。【88歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

産婦人科医師の野末悦子さんに教わります。

撮影・岩本慶三 イラストレーション・小迎裕美子 構成・越川典子

Q. 階段を昇るときに息切れ・動悸がするように。 更年期症状でしょうか。

最近、息切れ・動悸が気になり始めています。もともとあまり運動はしないほうなので、駅の階段などを昇ると息が荒くなることはありましたが、ここのところ、家の中にいるのに動悸がすることがあるのです。コロナ禍で家にこもっていたストレスかとも思いますが、年齢的に51歳と更年期のただ中。更年期の症状かも……と。最後の月経は半年以上前です。毎年受けている健康診断では、とくに問題ありません。(R・Tさん 51歳 会社員)

A.ホルモン補充療法(HRT)を始めるのにいいタイミングですね。

R・Tさん、いままで感じたことのなかった息切れ・動悸。さぞかしご心配のこととお察しします。安心すべきは、毎年の健康診断の結果です。生活習慣病と指摘されたこともないようですので、更年期症状である可能性は高いと思います。

この連載でもお話ししたことがありますが、更年期の症状は心身両面に、多種多様な症状を引き起こし、その数は100とも200ともいわれています。

女性の年齢別にみた主な死因の構成割合

女性の場合、血管系の疾患(脳血管疾患、心疾患)による死亡が閉経後に微増。「定期的な健診が身を守ります。婦人科系のがん検診も忘れずに」(野末さん)資料:厚生労働省「平成30年人口動態統計月報年計(概数)の概況」より
女性の場合、血管系の疾患(脳血管疾患、心疾患)による死亡が閉経後に微増。「定期的な健診が身を守ります。婦人科系のがん検診も忘れずに」(野末さん)資料:厚生労働省「平成30年人口動態統計月報年計(概数)の概況」より

R・Tさんのように、とくに激しい運動をしないのに胸がドキドキするーーこういう訴えをなさる方は少なくありません。
女性ホルモンであるエストロゲンが減少すると、脳幹にある視床下部から「もっと出しなさい」とばかりにFSHというホルモンを放出するのですが、自律神経をつかさどるのも同じ視床下部なのです。つまり、エストロゲンの分泌が減ると、自律神経系に大きな影響が出てしまうわけです。動悸のほかにも、ホットフラッシュやのぼせ、手足が冷える、眠れない……これらも自律神経の乱れによって引き起こされているんですよ。

閉経前後は、HRTを始めるのにとてもいいタイミングです。R・Tさんはまだ閉経はされていないようですが(最終月経から1年経過すると閉経)、少量のエストロゲンを補充することで、自律神経系が整って、ラクになります。

一度、更年期外来など婦人科で、いまの症状を相談してみてください。必要ならば、治療を始めましょう。同時に運動も始めるといいですね。

それでも動悸がする、どうしても心配ということでしたら、婦人科の医師と相談の上、専門医を紹介してもらい、心疾患系の検査を受けておけば、安心ではないでしょうか。

※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。

閉経前後は、HRTを始めるベストタイミング。(Dr.野末)

階段を昇るときに息切れ・動悸がするように。更年期症状でしょうか。【88歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】
  • 野末悦子

    野末悦子 さん (のずえ・えつこ)

    産婦人科医師

    横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、久地診療所初代所長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などを歴任。

『クロワッサン』1034号より

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