情報過多な日常……。気持ちの換気法を探る。│ しまおまほ「マイリトルラジオ」
コロナの影響で息子の保育園も長い休園に入り(4月末現在)、まるで夏休みのような日々が続いている。保育園があった頃は息子が出かけた後、午前中からテレビをつけて世の中を覗き見していたけれど、息子が四六時中一緒にいると、そうもいかない。テレビをつけようものならすぐに
「ニュースヤダ! ウルトラマン!」
となるからだ。
メレンゲ作りやダンボールちぎり、編み物を延々ほどくなど……時間が潰せるものを探してやっている。結局身近にあるものの作業が一番間がもつ。「自粛生活に備えて……」とわざわざ買ったトランポリンは、今や物置き。
いつもならここでラジオをつけるのだが、少し思い悩み、しばらく無音で過ごすことにした。コロナ禍でテレビもラジオもネットも情報過多気味。少し脳味噌を休ませたい。テレビやラジオの中の人たちが元気だからって、こちらも元気になれるとは限らないもの……。
ひとしきり遊んだ息子と、パンケーキで手抜き昼ご飯を済ませると、ちょっと気持ちに余裕ができて、ラジオをつけてみようと思えた。つまみをひねるとRCサクセションの「トランジスタラジオ」。
「面白い声だねえ」
と息子が笑い、わたしも笑った。停滞していた空気がゆっくりと動き始めた気がした。
日常だったラジオさえ負担に思えてしまうくらい敏感になっていた。部屋だけでなく、気持ちも時々換気しないと。
しまお・まほ●エッセイスト、漫画家。1997年『女子高生ゴリコ』でデビュー。著書に『マイ・リトル・世田谷』。
『クロワッサン』1022号より
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