「正志のことは、書いている時から嫌いというか。親友の彼氏がすごくイヤな人のとき、ないですか?(笑) ただ、そんなに強く“別れなよ”って言えない。だって私が親友と付き合えるわけではないし。ということが人生に何度もあって、その時の気持ちが込められています」
レイコの彼氏であり続けたいために魔法少女となった正志は、リナと共に東京駅構内のパトロールを始める。正志が元気になっていくのに対し、疲れ切っていくリナ。
「書きながら、自分は友情ってものを大事にしているんだなと。小説の中でも友情みたいなものをあまり汚せないというか、変なふうに書けないんですよ。友だちって、利害関係がないのに一生懸命になれたりとか、自分もそれに救われてきた経験があって」
村田さんが小説を書くのは自宅ではない。お昼に用事を済ませたあと、喫茶店やファミレスを巡って執筆。出版社への「通いカンヅメ」もよくする。編集部内のブースを借りて夜中まで執筆するのだ。ザワッとした場所で、原稿は進む。
「私は意識の部分では全然大したことを考えていなくて。無意識の部分を使わないと、ちゃんと物語を完成できない。書くことで思いがけない展開やセリフが出てきた時は、ちょっと人間の核心にあるものに近づけた気がします。全く完全に知ることはできないと思うのですが、でも知りたいから書く。それが、私が書く動機です」
この日着ていたのは注目のブランド『mame(マメ)』の洒落たワンピース。作家の視点で選んだ一枚だ。
「こういう発想で作りました、という物語性に弱くて。それを聞いてしまうと服でもアクセサリーでも香水でも、つい買ってしまいます」