「千秋庵という北海道じゃ有名な菓子メーカーがあって、そこの〈ノースマン〉というお菓子が昔から大好き。千秋庵は〈山親爺(やまおやじ)〉というのも有名で、道産子はみんなそのCMソングを歌えますよ。♪出てきた 出てきた 山親爺〜って(笑)」
と話すのは元プロボクサーの内藤大助さん。子どもの頃、〈ノースマン〉はめったに食べられないお菓子だった。
「家が裕福じゃなかったので、たまに誰かがおみやげで持ってきてくれるのが楽しみでしたね。母親が出すおやつは、カンカイという魚の干物とか、鮭とばとか、もう渋いものばっかりだったんです。だから〈ノースマン〉のあんこの甘さとパイのしっとり感は子ども心に格別でした。近所に住んでいる祖母は僕に甘くて、駄菓子とかも買ってくれたんだけど、〈ノースマン〉はウチのほうじゃ売っていなかった。やっぱり特別な存在でしたね」
今でも帰省すると食べたくなる味だ。
「最近じゃ実家に普通に置いてあるし、僕が空港で買っていったりもします。それにしてもウチの母親は厳しかったなぁ〜。初めて日本チャンピオンになった時、家にベルトを持って帰って報告したのに少しも喜ばないで、“まだ世界には強い人がいっぱいいるんだろ?”なんて平気で言う。頭にきたけど、その反発心でもっと上を目指せた面はありますね」
現役時代は試合前の減量に苦労した。
「試合が決まると、40日前から胃腸を冷やさないよう、水は夏でも常温しか飲みません。食事は温野菜と鶏のささ身中心、茹でると栄養素が抜けちゃうからレンジ調理です。最後は水も食事もギリギリで、計量当日なんてあと300g減らすために、ガムを噛んで唾を出して計量に臨んでました。1カ月以上空腹状態ってやはりつらいですよ(笑)。その分、試合のない時期は、甘いものも含めよく食べましたね。強いボクサーは皆、大食いなんです」