審美的効果だけではない、中高年こそ、矯正のススメ。
文・板倉みきこ
歯並びや噛み合わせが悪いと、噛む力も弱くなるもの。その状態が何年も続けば顎や顔の筋肉のバランスが崩れ、口の動きが不適切になり、唾液の分泌にも悪影響が及ぶという、負の連鎖が起こる。
「歯並びの悪さは見た目の問題以上に、口から始まるさまざまなトラブルの発端に。大人の矯正は、この先の健康やQOL維持のためにも必須です」(坂本さん)
矯正をする際、さまざまな選択肢があるのは審美目的と同様。ワイヤーを使うか、使わないなら取り外し可能なマウスピースタイプを選ぶ。使う場合は表に装置するか、裏にするか。ブラケットやワイヤーは銀色のものか、目立たないタイプかを選択できる。
「効果が出やすくきれいに仕上がるのは、外側にワイヤーをするパターン。でも、矯正装置は進化していますし、裏側にワイヤーをする場合でも、技術次第で充分効果が得られることも」(坂本さん)
歯並びの悪さは上顎の未発達が原因で、健康に悪影響を与える口呼吸をもたらしていると考えた小原澤さん。そこで、狭い顎を広げる矯正(拡大床)を提案している。
「顎を広げると、口腔内で舌の筋肉を正しく使えるようになります。その結果、歯並びは整い、いびきや歯ぎしり、食いしばりが軽減するなど、さまざまなメリットが期待できます」(小原澤さん)
まずは歯科医としっかり相談し、最適な矯正方法を探そう。
〈 審美ブラケット 〉
あまり目立たせたくないけれど、効果は確実に欲しい場合の矯正法。
歯の表側に装置をつける矯正方法で、審美性の高い透明や白色タイプの、セラミックスやプラスチック製の装置のこと。部分矯正で約40万円〜、上下で約80万円〜(編集部調べ)。1〜2カ月に1回通院し、およそ1〜3年程度装着する(個人差あり)。
〈 拡大床 〉
未発達な顎のスペースを広げて、舌の動きを正常に戻す効果に期待。
取り外し式のプラスチック製装置で顎を広げてスペースを作る。歯を動かすためのバネと拡大用のスクリューが組み込まれている。装置代は約10万円。
1日20時間程度装着(食事や歯磨きの時は外す)し、一般的に2〜3年半かけて顎を広げる(個人差あり)。
坂本紗有見(さかもと・さゆみ)さん
歯科医。銀座並木通りさゆみ矯正歯科デンタルクリニック81院長。日本アンチエイジング歯科学会常任理事。大人の歯列矯正を推進。
小原澤友伸(こはらざわ・とものぶ)さん
歯科医。銀座6丁目のぶデジタル歯科院長。米国口腔インプラント学会、顎咬合学会専門医。http://www.nobudental.net
『クロワッサン』1016号より