【豊﨑由美さん×村井理子さん 対談】犬と生きる
その愛犬・黒ラブラドールのハリーに豊﨑由美さんが会いに来ました。
撮影・福森クニヒロ 文・三浦天紗子
大型犬を飼ってみたら、生活というか人生ががらりと変わりました。(村井さん)
自分の年齢を考えると、飼うタイムリミットが迫っていると思います。(豊﨑さん)
豊﨑由美さん(以下、豊﨑) 滋賀に引っ越していらした最大の理由が、犬のためだとか。どのくらい経ちましたか。
村井理子さん(以下、村井) 京都ではいわゆる町家住まいで、犬のために家が欲しかったんですが、土地が高くてとても買えそうもない。なので、京都への通勤圏でもある琵琶湖の近くに、出産後すぐ、夫、双子の息子、2匹のスコッチテリアと越してきました。11年前ですね。
豊﨑 私は、家に猫が3匹とaiboがいます。ロボット愛もありますし、なんなら、プレデターとかエイリアンも人間よりは好もしいくらい。犬派、猫派なんてバカバカしい。私は、ひと以外派です。“けものバカ”です。
村井 けものバカですか(笑)。
豊﨑 なので、犬も飼いたい気持ちは人一倍あるんですが、なぜ踏み切れないかというと、やっぱり手がかかるし、夜遊びもやめなきゃいけないのかなと。そこがネックなんです。自分ももう57歳なので、犬を看取るまできちんと飼うとなると、そろそろラストチャンスだなと思うんですけどねえ。それで今日は村井さんに「お酒なんかより全然楽しいですよ」と折伏(しゃくぶく)してもらおうと。
村井 いえいえそれは。飲むほうが断然楽しいですよ。そういえば、京都に住んでいたころは、べろんべろんに飲んでテリアの散歩に行くこともよくありましたね。行けた私の満足感と、犬の幸福感とがつまみになって。
豊﨑 ハリーみたいな大型犬を飼うのは初めてなんですよね? 中型犬と比べて、いちばんの変化は何ですか。
村井 犬を飼うとき、自分の生活を変えてまで飼うかという問題は避けられないです。特に大型犬は、生き方そのものが根底から変えられてしまうくらいの変化があります。何をするにもまずハリーのことを考えます。
豊﨑 小さいときは、息子さんたちもお母さんに甘えたいところもあるだろうし、それが何でもハリー第一だとすねたりしなかったですか。
村井 生まれたときから犬がいる暮らしなので、それはあまりなかったです。でも、ハリーも来たばかりのころは甘噛みがすごかったので、子どもたちに部屋から閉め出されたりしてました。険悪な状態が3、4カ月続き、これは失敗したかもしれないと不安になったこともありました。大人の勝手で飼った犬なのに子どもが犠牲になるというのは、これは大変なコトになったぞと。でもほどなくハリーがぐっと成長して、そのあと小6になった息子たちも追いつき、やっと和解しました。
豊﨑 ベッドにおしっこというのも、その最悪の時期に起きたんですか。
村井 ハリーの山盛りが……。
豊﨑 え、大のほう?
村井 大も小も。ベッドは1台捨てる羽目になり、ドアは破られ、あちこちに爪痕を付けられ……、網戸もこれが4枚目です。いまは一切なくなりましたが、ラブを手放す人が多いというのもわかります。
豊﨑 力が強いから。盲導犬や警察犬になるラブラドールなど大型犬の訓練はさぞ大変なんでしょうね。
村井 実はハリーは、生後3カ月で警察犬訓練所から譲り受けてきたんです。たまたま譲渡の仔犬が出ていて。