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冬から春、格別においしくなる沖縄の野菜。命の薬とも呼ばれる、旬の島野菜を食す旅。

この時季、沖縄には、自然のパワーを秘めた力強い野菜が彩り豊かに育っています。そんな野菜を使った心尽くしの一皿は、心にも体にも効く、「命の薬」(ぬちぐすい)となるのです。
  • 撮影:大城 亘 文:川口美保

<名護>【クックハル】採れたての野菜と地元での繋がりが生み出した「やんばる」尽くしのランチ。

カウンターには朝まで畑に植わっていた野菜が色とりどりに並ぶ。ズッキーニだけでも食感や味わいが違う4種類。季節によって並ぶ野菜は変わるが、「冬から春の時季、沖縄のキャベツは宇宙一おいしい!」と芳野さん。

冬の畑を想像して沖縄県北部のやんばる地域を訪れたが、その緑に溢れる畑の美しさと栽培されている野菜の種類の豊かさに驚いた。カラフルなラディッシュ、形も色もさまざまなズッキーニ、赤と黄のミニトマト、かわいらしいエディブルフラワーも咲いている。

「冬から春先にかけて、沖縄ではほとんどの野菜を“旬”で食べることができるんです。ハウスを立てて暖房をたく必要がないので野菜もストレスなく育つ。この時季、うちの畑だけでも約70種類の野菜を栽培しています。やんばるの冬は、暖かいけれど適度な寒さもあって、その寒暖差がまた、野菜をおいしくしてくれるんですよ」

そう話すのは、この土地で農業を営む芳野幸雄さんだ。

15年前に沖縄に移住し、農業をスタートさせた芳野さん。やんばるの生産者と飲食店を繋ぐ「やんばる畑人プロジェクト」の代表も務める。

「沖縄の野菜がなぜおいしいのか。理由として、沖縄の土壌にミネラルが多いからといわれていますが、それであれば本土の沿岸部でも同じ。沖縄が他の場所と何が違うかというと、北緯の位置、つまり太陽の入射角度ですよね。強い日差しの中で自分を守るために頑張って育った野菜はやはり力強くておいしいんです。それは農家の努力や技術ではどうすることもできない、この土地からの恵みです」

畑人(ハルサー)である芳野さんが、沖縄の人たちにもっと地元の野菜のおいしさを知ってほしいと『クックハル』をオープンさせたのは2014年。店内には採れたての野菜の直販所が併設され、新鮮だからこその野菜のみずみずしさと力強さが視覚に飛び込んでくる。
「東京には世界中のおいしいものが集まるけれど、朝採った野菜がランチで食べられるという贅沢はローカルだからこそ。旬の野菜のおいしさは格別だし、食事としてお出しすることで、その食べ方も知ってもらいたいんです。例えば、ルッコラやからし菜は花も食べられるし、からし菜はその種で粒マスタードを作ることもできます」

食材はすべてやんばる産という「YAKI-Panino」850円。野菜、ソーセージ、パン、ハーブやスパイス、きのこ類もすべてやんばる産。食用のエディブルフラワーやハイビスカスもひと口どうぞ。

この日注文した「YAKI-Panino」のプレートは、「凧糸以外すべてやんばる産」と言うほど、野菜以外も、やんばる産の豚のソーセージ、恩納村の小麦を使用したパン、そこに挟んだ粒マスタードや使用したハーブもこの土地で採れたものばかり。

ひと口ひと口、どれもやんばるの自然のように生命力溢れる味がして、体が元気になっていく。おいしいのはもちろん、この土地との繋がりが生み出す豊かさと、「食」を通して地域が循環する喜びまでもが伝わった。

店内では芳野さんの野菜のほか、やんばるの畑人仲間の野菜、「やんばるピクルス」などを販売しており、全国発送も可。

クックハル●沖縄県名護市字名護4607-1 アグリパーク内 TEL:0980-43-7170 9時〜17時(ランチ11時〜15時) 不定休

<おすすめスポット>【 21世紀の森公園】ゆったりとした時を過ごせる名護の“セントラルパーク”。

園内にはビーチもあり、夏は海水浴客で賑わう。

美しい弧を描く名護湾に面した広大な21世紀の森公園。なかでも芳野さんのおすすめは、グスク(城)を模して造られた屋外劇場。アーチ門の向こうに名護湾と対岸の山々が見え、夕景が美しい。「やんばる畑人プロジェクト」主宰の食の祭典「香祭」も毎年この公園で開催されており、次回は2018年3月25日(日)を予定。やんばるの旬のおいしさを味わいに訪れたい。

21世紀の森公園●沖縄県名護市大南2丁目1番25号

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