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分量の狂いは失敗のもと――豊田譲治(ホテル・グランドパレス調理課長)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、フレンチの達人のアドバイス集から、食材を扱う姿勢を学びましょう。

文・澁川祐子

1978年2月号「西洋料理コツのコツ」より
1978年2月号「西洋料理コツのコツ」より

分量の狂いは失敗のもと――豊田譲治(ホテル・グランドパレス調理課長)

前回から引き続き、フレンチの達人が指南する西洋料理の基本講座。後半には「とっておき」と冠し、実践的な料理のコツが惜しげもなく披露されています。

・焼きすぎた料理には、溶かしバターを塗ると、味にもなってツヤも出て一石二鳥。

・ドレッシングには、風味づけに辛子を少し入れるとコクが出る。

・レモンは、白い筋の部分に庖丁で切り目をつけておくと無駄なく絞れる。

<パン粉は自家製がいちばん>などと、ちょっとハードルが高いものもありますが、実際に取り入れてみたいと思うアドバイスもたくさん。なかでも心に留めたいのは、食材を無駄なく使い切るという姿勢です。それが、今回の名言にも表れています。

言葉だけ読むと、いかにも分量をきちんと計りなさいと言われているようですが、そうではありません。名言が出てくるのは、<ゴムベラは台所の必需品>という項目。鍋のまわりについた分も分量のうちだから、ゴムベラできれいに取りましょう、というのが本意です。

ほかにも、ワインの飲み残しはドレッシングに少し混ぜること、いらないレモンの皮やパセリの茎は、肉や野菜をゆでるときの香味野菜として使うことなど、食材を捨てない工夫がたびたび語られています。

いかに食材を余すところなく、生かし切るか。その心構えこそが、料理上手になるための隠れたヒントなのかもしれません。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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