ルーベンス展を何倍も楽しむための4つの話題。
撮影・谷 尚樹 文・黒澤 彩 コラム取材協力・佐藤麻理子(TBSテレビ事業局プロデューサー)
アントウェルペン市でイベントが目白押し。
ベルギー・フランダース地方では、2018〜’20年を「フランドル絵画年」として、フランドル絵画の巨匠たちにまつわるイベントが行われている。その第1弾が、我らがルーベンス! アントウェルペン市では、「バロックの都アントウェルペン2018ールーベンスからの昇華」と題し、ルーベンスとバロック文化を紹介するイベントを町の各地で開催する。歴史ある聖アウグストゥス教会には、現代のベルギーを代表するアーティスト、ヤン・ファーブルがデザインした祭壇飾りが設置されるなど、ルーベンスの作品だけではなく、ルーベンスにインスパイアされた現代の作品も通して、その魅力に触れることができる。
家族と暮らした家や、通った教会、お墓などが今も残っているアントウェルペンの町を歩けば、ルーベンス作品をより身近に感じられるだろう。展覧会で興味がわいたら、ぜひ出かけてみたい。
ネロが見た聖母大聖堂の祭壇画を4Kで再現。
アントウェルペンの聖母大聖堂にある3つの祭壇画、《キリスト昇架》《キリスト降架》《聖母被昇天》は、ルーベンスの傑作として名高い。対談でも話題になったとおり、ネロとパトラッシュが息をひきとる間際に見た絵がこれ。日本で最もよく知られているルーベンス作品なのだが、聖堂に飾られている大作であるがゆえに輸送してくることができない。そこで、本展ではそれぞれの作品を高画質の4Kカメラで撮影し、国立西洋美術館のロビーでほぼ原寸サイズで再現。教会に響く足音やパイプオルガンの音色など、音も同時収録を敢行、実際に聖母大聖堂の空間にいるような臨場感を味わえる。
さらに、ローマの聖堂にあるルーベンスのイタリア滞在時代の超大作も同様に4K撮影。本当ならその場所に行かなければ叶わないような美術鑑賞を日本にいながらにして擬似体験できる。技術の進化に驚いてしまう。