くらし

話題の「フェルメール展」、絵を見る前に知っておきたい基礎知識。

  • 監修・千足伸行(成城大学名誉教授、広島県立美術館館長) 撮影・谷 尚樹 文・石飛カノ

画家としての歩み、そして私生活。フェルメール、43年の生涯。

長きにわたって謎に包まれていたフェルメール。さまざまな研究者の手によって、現在ではその生涯の歩みが明らかにされつつある。

この世に生を受けたのは1632年、場所はオランダのデルフト。16歳で画家修業を始め、20歳でプロの画家に。宗教画家として出発するが、時代の流れの中で風俗画家に転身。29歳で画家の同業者組合の理事となり、作品を自由に売買する権利を得る。その後は自らの絵画スタイルを模索する人生を送った。
「フェルメールは非常に凝り性だったと僕は思います。43年の生涯で35点(37点など諸説あり)しか作品を残していないのがその表れ。理由については専門家でも納得のいく説明をつけられていませんが、僕に言わせれば彼は凝り性。商売本意ではなく、自分が納得できるまで作品を手元に置いて描いていたんじゃないかと。高価なラピスラズリの絵の具を風俗画に使ったというのも、それが理由だと思います。フェルメール自身、請け負った値段では合わないなと思っていたかもしれません(笑)」

画家としての評価は高まりつつはあるものの、すぐに収入に結びつくわけではなく、常に借金を抱え込んでいたという。私生活では11人の子どもをもうけ、義母の援助を受けながらも莫大な借金を残し、デルフトで43年の生涯を終えた。フェルメールの名声が轟くのは、その200年後のこととなる。

今回の展覧会で出合える作品の年譜

1654-55年頃 マルタとマリアの家のキリスト
1656年 取り持ち女
1658-60年頃 牛乳を注ぐ女
1661-62年頃 ワイングラス
1662-63年頃 リュートを調弦する女
1662-65年頃 真珠の首飾りの女
1665年頃 手紙を書く女
1665-66年頃 赤い帽子の娘
1669-70年頃 恋文
1670-71年頃 手紙を書く婦人と召使い

千足伸行(せんぞく・のぶゆき)●成城大学名誉教授、広島県立美術館館長。TBSを経て国立西洋美術館に勤務。ドイツ留学後、成城大学文芸学部教授に。2011年より現職。美術評論の著書多数。

フェルメール展
【東京展】
2018年10月5日(金)〜2019年2月3日(日)
上野の森美術館
9時30分〜20時30分(開館・閉館時間が異なる日があります)
12月13日休館
前売日時指定券:一般2,500円/大学・高校生1,800円/中学・小学生1,000円
問合せ TEL:0570-008-035
 www.vermeer.jp/

【大阪展】
2019年2月16日(土)〜5月12日(日)
大阪市立美術館 9時30分〜17時
月曜休館(祝日は開館)
一般1,800円/大学・高校生1,500円/中学生以下無料(前売および20名以上の団体料金は200円引き)
問合せ TEL:06-4301-7285
 www.vermeer.osaka.jp/

『クロワッサン』983号より

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