パリに住んだからこそわかった日本の喫茶店メニューの偉大さ。
子どもの頃から朝はパン派だという猫沢さんに、甘めの卵焼きと海苔をはさんだ、和の趣あふれるサンドイッチを作ってもらった。卵を溶くときも、焼くときも、そして胡椒をふるときでさえ、とにかく真剣。おいしいものをおいしい状態で食べたいという、欲望の熱量が伝わってくる。
「そう、これは、卵を焼く前にパンの準備を終えておくのが大切で、卵が焼けたら〝即食べ〟が基本です。いろいろやってみたんですけど、このレシピが完全版。なぜかちゃんと自分でひいただしより、顆粒だしのほうがおいしく仕上がるし、海苔もこの量で充分。これ以上何もしちゃいけないんです」
長年使いこんでいる様子の卵焼き器をひっくり返し、熱々の卵をパンにのせたかと思ったら、あっという間に“猫式海苔たまサンド”が完成していた。食べてみてとすすめられてほおばると、レトロな喫茶店のメニューを思わせる、懐かしくも優しい味が広がる。幸福感をいや増すのはほのかに甘いパンの風味。使っているのは、お気に入りだという『オリミネベーカーズ』のもの。
「フランスに長く住んでいたから、毎日バゲット食べてるんでしょ、なんて思われがちですけど、いえいえ、日本には食パンという、おいしくて柔らかい素敵なものがあるじゃないですか! ちなみに、『オリミネベーカーズ』には食パンが4種類あるんですけど、これは一番お高いハイグレードなもので、本当においしいんですよ。変な言い方ですけど、こういうなんの変哲もないサンドイッチはパンのおにぎりだなって思います」