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コレクションするというのはその人なりのものさしがあるということです――白石勝彦(住空間計画研究家)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、ちょっと変わったインテリア特集でみつけた言葉を紹介します。

文・澁川祐子

コレクションするというのはその人なりのものさしがあるということです――白石勝彦(住空間計画研究家)

1977年9月号「自分だけの知的世界を持つためのインテリア」より
1977年9月号「自分だけの知的世界を持つためのインテリア」より

インテリアというと、とかく収納や使い勝手など機能面に目が向きがちですが、この特集は「自分だけの知的世界を持つため」とちょっと変化球です。物質的な豊かさが満たされ、より精神的な豊かさを求めるようになった時代背景を色濃く反映しているのでしょう。

記事では、書斎を持つことは叶わなくても、ひとりの世界に入り込むための空間づくりを提案。スタンドの光が届く範囲が自分の世界になるから自分専用の明かりをもつといい、三方が囲まれていると安心するからライティングビューローがおすすめ、などとかなり具体的です。

そして、自分だけの世界を形づくる大切なアイテムとして挙げられているのが本棚。<本も、すべてひっくるめて、その人のコレクションの収め場所が本棚です>と、住空間計画研究家の白石勝彦さん(1926-2010)は語ります。

ぎっしりと本を詰めるだけではなく、趣味のアイテムも飾ってみる。自分の好きなものだけで占められた本棚が一台あるだけで、人は安心できるといいます。まさしくそんな空間は、人とは比較することのできない、自分だけの世界といえるでしょう。

持たない暮らしが話題の昨今ですが、結局のところ、大切なのは「何を持つか」なのかもしれません。時代を経たいまだからこそ、もう一度味わい直してみたい言葉です。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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