それは、家族などの人間関係でも同じこと。芥川賞受賞作品「穴」もそうだったが、小山田作品にはよく嫁と義母の関係が出てくる。
「嫁が姑とうまくいかない、などのある種ビビッドな話題であれば、そりゃそうだ、とあっさり物語的に回収できますよね。そうではなくて、うまくやっている息子の結婚相手と義理の母親、というのを考えると、仲はいいんだけれどそれはそれで物語的に回収できないひずみみたいなものがきっとあるのではないか、と思ってしまいます。虫を見るときに感じる不思議と同じ不思議を感じるというか」
“明日がうらぎゅうだな”、ガラガラのバスで聞こえてくる老人の会話、初めて訪れる夫の実家の裏庭に咲く真っ赤な彼岸花、動物園のカメが灰色の甲羅と甲羅をぶつけあっている音、新居の寝室の窓にへばりついたやもり……ありふれた日常に紛れ込んでいる違和感。よくよく周囲を見ると、世界は変なことやものに満ちている。