正統派時代劇に向井理と経済を足したらこうなった。NHK「そろばん侍 風の市兵衛」の新しさ。
撮影・文 クロワッサンオンライン
2018年5月19日(土)に放送開始の、土曜時代ドラマ「そろばん侍 風の市兵衛」。
時代劇では鉄板の人気を誇る幕末や戦国時代ではなく、舞台は文政年間(1818年〜1831年)の江戸。町人文化が花開いた太平の世でありながら、武士の世の終わりもちらりと見えてきた微妙な時代に、今で言う公認会計士+経営コンサルタントとして武家や商家の危機を得意のそろばんで救うのが、向井理さん演じる主人公の唐木市兵衛です。
3話完結型の3部構成、全9話で、1部の脚本は再来年放送の長谷川博己さん主演の大河ドラマ『麒麟が来る』の脚本も手がける池端俊策さんなのも期待大。
「『そろばん侍』というタイトルだけ聞くと、なんかのんびりした、侍がそろばん教えてくれる話かな? と思っちゃいますが、実は結構中身はドロドロ。主人公がそろばんで悪役を追い詰めて、相手が開き直ったら斬る、という話です(笑)」と取材会場を沸かせたのは、市兵衛のバディ役、「鬼渋」と呼ばれる北町奉行所の同心役の原田泰造さん。そのとおり、経済ドラマの要素を取り入れつつも、痛快な殺陣もちゃんとある、正統派エンターテインメント時代劇なのです。
筆頭目付の家に生まれながらも、そろばんの腕を磨き期間契約で家計を預かる「渡り用人」、今で言う公認会計士になったという異色の侍はクールで知的な印象の向井さんにぴったり。
このドラマの新しさは多々あれど、個人的には向井さんと時代劇という、アンバランスとさえ思えてしまう組み合わせもその一つ。長身痩躯、八頭身の日本人離れしたスタイルと現代的な顔立ちゆえ、「侍の服装をしているはずなのに、脳内でぱりっとしたスーツを来た外資系金融会社のエリートサラリーマンに変換されてしまう」と戸惑う絵になってしまうというか、時代劇における現実感がないというか……。剣の達人でもあるという市兵衛が土埃が舞う渇いた江戸のまちを歩くさまは、ちょっと西部劇のヒーローのようでもある。
「風のように、とか、風に乗って、と書かれている台本」を表現するために、普通の立ち回りではなく回転して受けるとか、高い跳躍をしているように飛んでみせたりと、殺陣のシーンでは工夫したという向井さん。演技力もさることながら、向井さんのすらりとしたルックスでないと実現しなかった風のように軽やかなニューヒーロー。制作統括の睦田元一さんも、原作を読んで「この役は向井さんしかいない」と思ったとか。
第一部は、いきなり水死体が上がるシーンからスタート。残された旗本の未亡人の家計をコンサルすべく乗り込んだ市兵衛に、こんなにわかりやすく悪そうな人いる? と思わず笑ってしまうほどの悪役が忍び寄る。剣とそろばんで彼がどう悪役を追い詰めるのか。観終わったあとはスカッと爽快な気分になれそうな痛快時代劇から目が離せません。(クロワッサンオンライン編集部 のぐぽん)
<番組概要>
土曜時代ドラマ「そろばん侍 風の市兵衛」
放送予定:2018年5月19日(土)スタート<全9回>
NHK総合で毎週土曜日 午後6時5分〜6時43分放送予定
原作:辻堂魁
脚本:池端俊策<第1部>、小松與志子<第2部>、森岡利行<第3部>
出演:向井理、原田泰造、橋本マナミ、渡辺いっけい、筒井道隆ほか
制作統括:陸田元一(NHKエンタープライズ)、土屋勝裕(NHK)
演出:榎戸崇泰、中島由貴(NHKエンタープライズ)
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