不動産が負動産になることも! リフォーム前に把握すべきこと。
撮影・加藤 淳 文・寺田和代
【POINT 1】安心・快適に住み続けるために改修のタイミングと予算を知る。
●マンションの外観や共用部分は基本的に修繕積立金がカバー。
●戸建ては10〜15年ごとに屋根や外壁を補修。予算約100万円〜。
●築30年超の中古戸建て全面改修は新築購入予算を上回ることも。
リフォームのタイミングや予算についてどんな心づもりをしておくべきだろう。
「マンションの場合、共用部分はプールした修繕積立金で基本的にはまかなわれます。10数年単位が目安とされる大規模改修では外壁の塗装やクラック(ひび)の補修などが含まれます。専有部分のリフォームについては戸建てとほぼ同じです」
戸建ては建物の内外とも家主自身が修繕計画を作り、定期的に手入れを重ねることが長く安心して住み続ける条件になる。
「屋根、外壁など外観部は10〜15年おきの修繕が勧められます。予算は100万〜150万円。水回りは30年前後でマンションも同様。トイレ、台所、風呂の水回り3点で300万〜500万円。さらに壁、床も全改修のリノベーションの場合は坪30万円はかかります」
交通至便な中古物件への買い替えも人気だが、築30年以上の戸建ては改修予算が新築費用を上回ることもある。
【POINT 2】住み続けるか、買い替えか、不動産価値を見極めておく。
●中心部にあるか? 駅近か? 距離が価値と比例する。
●人口減少社会で郊外はますます不人気傾向。売れる時に売ろう。
●人気の中古リゾートマンションは場所次第で老後の住居になる。
老朽化が気になる住まい。住み続けるか買い替えるかを見極めるポイントは?
「住人の高齢化や冒頭で紹介した昨今の不動産事情を考えた場合、駅や都心(中心地)への距離がより近い場所への住み替えを考えてもいいかもしれません。というのもこの先の人口減少時代に備えて、いくつかの自治体ではすでに駅周辺に役所、病院、学校、店、住宅などを集中させるコンパクトシティ構想が進められています。その外部となる地域はますます不便になり、公共交通機関の廃止、便数の縮小なども予想され、そうなってから売却しようとしても売れない可能性があります。売れるうちに売っておくのも手です」
一方で中古リゾートマンションも場所によって老後の住居として意外な人気が。
「人が集まれば店や病院も集まり、リタイアビレッジとしての機能も育っていく。亡くなった後に負の財産にならないか、総合的な判断も必要になるでしょう」
【POINT 3】不動産を負動産にしないため離れて暮らす親の家をどうする?
●空き家を売りたくても売れない。地方ではすでに深刻な問題に。
●自治体に強制撤去されるケースも。更地にすると固定資産税は負担増。
●最後はどこでどう暮らしたいか、親の希望を尊重し家族で話し合う。
親の高齢化や介護が視界に入った子にとって、親の家をどうするかは大きな課題。親亡き後の家の処遇に悩む人も多い。
「地方で起きているのは空き家を売ろうとしても売れない現実です。古い家を放置すれば問題が多いとわかっていても更地にしない人も。なぜなら更地にすると固定資産税額が最大約6倍になるため、節税面からそうせざるを得ないのです」
一昨年に施行された通称“特定空き家法”によって状況はさらに厳しくなった。
「行政が強制的に上物を撤去することも可能になりました。家主が納得できなくても代執行され、撤収費用が請求されます。更地になった土地を自治体が買ってくれるわけでもない。老親亡きあと空き家になる家は売れる時に売ることをお勧めします。親が元気なうちから、最後をどこで誰とどう暮らすかを含めて家族で話し合うことが欠かせません。時間をかけて親自身に決めてもらうことが大切です」
藤川太(ふじかわ ふとし)●ファイナンシャルプランナー。「家計の見直し相談センター」代表。資産運用、不動産投資などに精通。著書に『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』ほか。
『クロワッサン』961号より
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