【準備編】あるもので食べたいおかず作り。発想を転換して食卓に広がりを。
撮影・小林キユウ 料理製作・坂井より子 文・新田草子
買い物は週1回。買ってきてすぐに下ごしらえを。
その第一歩が、買い物。坂井さんが車でスーパーに出かけるのは週に1回、土曜の午前中だけ。必ず買うものも決まっている。玉ねぎやじゃがいもなど日持ちする野菜類に、大豆製品やちくわなどの加工食材、そして豚の薄切りか切り落とし肉。それらを最初に次々とカゴに入れ、あとはその都度必要なものを買う。肉や魚を近所の商店で買い足すこともあるし、夫が丹精込めて世話する畑から届く野菜が、テーブルを賑わせることも多い。が、
「とりあえず定番の食材があれば、必ず何か作れるの。我が家では週に何度か家族全員で料理を持ち寄って食事をするのですが、そういうときに何品か作る場合でも、慌てずに済みます」
たとえばちくわは野菜と和えたり、斜め薄切りにして醤油で炒め、青のりを振るだけでごはんに合うおかずに。いくつかの食材は、買ってきてすぐに下ごしらえを済ませておくと、日々の食事の支度がさらに簡単になる。
「根菜やきのこは、裂いたり千切りにして天日干しにしておくと、お味噌汁の具が何もないときなどに助かりますよ。シラス干しも、ちょっと干してから冷凍するとぱらっとして使いやすく、サラダのトッピングにもなります」
いまあるものでそのときに食べたい、満足感のあるおかずを作る。
ストックスペースに、大根しかない。そんなときでも坂井さんは、みんなが喜ぶおかずを生み出してしまう。煮物にしよう、でも醤油味だとありがちだから、クリームチーズと煮てみたらどうかしら……。
「買い物に労力と時間を使うよりは、あるもので作ったほうが早道です。調味料も、ないならないなりに。先日も麻婆豆腐を作るのに豆板醤が切れていたとき、自家製の“梅味噌”を使ってみたんです。そうしたら、ことのほかおいしかった。こういう発見があるってうれしいものですよね」
いまあるものでそのときに食べたい、満足感のあるおかずを作る。そんな発想方法が、自然とレパートリーを広げるトレーニングにもなっている。
「ここに移り住んだ40年前はまわりにスーパーが一軒もなかったの。買い物は逗子や横須賀まで行かなくちゃならない。そのときから、買いだめしておいてあるもので作るクセがついたんです」
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