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角田光代さんが苦手なSF小説に挑戦!果たしてその感想は?

SF小説というだけで読まなかったという角田光代さん。カート・ヴォネガット・ジュニアの初期の代表作『スローターハウス5』に挑戦した感想を伺いました。

撮影・千葉 諭、尾嶝 太(角田さん) 文・一澤ひらり

これまで苦手意識を感じて避けてきたというSF小説に角田光代さんが挑戦! 初めての人も読みやすい名作を翻訳家・書評家の大森 望さんに選んでいただきました。

『スローターハウス5』カート・ヴォネガット・ジュニア

トラルファマドール星人に誘拐されたビリー・ピルグリムは、けいれん的時間旅行者となり、みずからの人生をランダムに経験する。自伝的要素を含む、ヴォネガット初期の代表作。ジョージ・ロイ・ヒル監督の映画版も必見。(ハヤカワ文庫SF 720円)

『グラン・ヴァカンス』飛 浩隆

仮想リゾート〝数値海岸〟の一画にある〝夏の区界〟。そこでは人間の訪問が途絶えて千年、残されたAIたちが永遠の夏休みを過ごしていた……。美しく残酷な最先端の日本SF。前日譚『ラギッド・ガール』もすばらしい。(ハヤカワ文庫JA 800円)

『魚舟・獣舟』上田早夕里

表題作は、陸地の大半が水没した未来を背景に、ヒトの遺伝子を持つ異形の生物と人類との関係を描く衝撃の傑作。他に、人間に寄生する茸が蔓延する終末SF「くさびらの道」や、痛切な青春SF「小鳥の墓」など。(光文社文庫 590円)

 『あなたの人生 の物語 』テッド・チャン

映画『メッセージ』の原作となった表題作はじめ、SFのアイデアと人間ドラマがみごとに融合した当代最高のSF短編集。本書の次は、グレッグ・イーガン『しあわせの理由』、ケン・リュウ『紙の動物園』をぜひ。(ハヤカワ文庫SF 960円)

『ユービック』フィリップ・K・ディック

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』や『高い城の男』を押さえて「PKD総選挙」第1位に輝いた名作。超能力者集団vs不活性者集団の対立を軸に、読みだしたら止まらないサスペンス&アクションが幕を開ける。(ハヤカワ文庫SF 820円)

「なぜこの本を選んだかというと有名な人だからです(笑)。カート・ヴォネガット・ジュニアの名前はよく知っていたし、20代のころ、周囲の友だちはみんな読んでいたんですよね。でもSFとか、シャーロック・ホームズやアガサ・クリスティみたいな探偵ものとか、どうしても手が伸びなかったんです」何か違う匂いがして近づけなかった、と角田光代さん。SFのように架空に繰り広げられる世界がわからなければ前に進めないし、小説に入っていけない。理解できないことに対する恐怖心があったのかも、と自己分析する。

「『スローターハウス5』は最初ドレスデンを旧友と訪ねるところから始まるので、すんなり物語に入っていけました。書かれているのは人間の営みでしたから、主人公が宇宙へ行っても違和感はなかったし、何よりすごく面白かったんですよね」

『スローターハウス5』カート・ヴォネガット・ジュニア
『スローターハウス5』カート・ヴォネガット・ジュニア

「けいれん的時間旅行者」として自分の意思とは無関係に過去と未来を往復する主人公のビリー・ピルグリム。「自分の誕生と死を何回見たかわからない」と語られるほどにままならない時間旅行で富豪の娘と結婚したり、異星人に誘拐されて動物園で見世物になったり、第二次世界大戦でドイツ軍の捕虜となったり……。時空を超えてさ迷い、彼が見たものとは何だったのか?

「ある瞬間、意識が抜けてどこかに行くっていうのは、タイムワープみたいに捉えなくても象徴的に読めますよね。私はタイムワープ的に読まずに、もうちょっと意識の話として読みました。たしかに時間がポンポン飛んで、ビリーの人生のさまざまな場面が出てきてびっくりするけれど、それが重層的な厚みとなっていますよね」

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