カリフォルニア・セントラルコーストの旅②
文・斎藤理子
博物館クラスの蒐集品に圧倒される、
文字通り贅を尽くした部屋の数々。
ハースト・キャッスルの邸内には、無数のベッドルームをはじめ、書斎、図書室、映画室、遊戯室、美容室、ダイニングホール、ティールームなど、街ひとつ分といってもいいほどの施設があります。ダイニングルームやビリヤードルームや壁をおおうタペストリーは、14世紀のもの。調度品の多くが、博物館に展示されていてもおかしくない文化財ばかりです。
名画や彫刻、凝った細工天井など、邸内のどの部分からも当時のハースト氏の富豪ぶりと権勢のすごさが伝わります。
当時の様子を保存しているキッチンも、料理好きならかなり興味深い場所。20世紀初頭では最新のオープンや、木の扉の冷蔵庫、ノスタルジックな鍋などの調理道具は見ていて本当に飽きません。料理人や給仕人の控えの間などをみると、当時の富豪と使用人の階級差的なことまで垣間見え、興味はつきません。
ワインセラーは、東京の大きなワインショップを凌ぐくらいの広さがあります。当時からワイナリーを所有していて、現在もパソロブレスに「ハースト・ランチ・ワイナリー」を所有しているハースト家ですが、セラーに並ぶのはロマネコンティやシャトー・マルゴーといったフランスの超高級ワインばかり。20世紀初頭はまだ品質がそれほど高くなかったカリフォルニアワインを避け、ヨーロッパの高級ワインを買い占めた富豪の姿が目に浮かびます。
このハースト・キャッスルは、現在はカリフォルニア州立公園の一部にあり、州の所有になっています。個人で自由に見学することはできませんが、有料のガイド付きツアーを申し込めばOK。丘の麓にあるビジターセンターからバスで“城”に連れて行ってくれますが、建物入口に到達するまで10分以上かかり、その距離の長さだけで、この邸宅の想像を絶する広さが体感できます。
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