【後編】いつか土になる「くさる家」で暮らす心地よさ。
撮影・尾嶝 太
自ら改修した奥会津の古民家に暮らす今井博さん夫婦。博さんは現在、近隣の空き家を活用する活動を進めている。その中で目にするのは、立派な古民家でも、リフォームに新建材を使ってしまっている残念な状態。新建材とは、ビニールやプラスチックなどでできた安価で加工のしやすい人工建材で、「きれいに年を取らない」(博さん)。本当は地元の材料を使いたくても、大工さんも施主も、カタログに載っている塗装してある材料を希望する事例も多い。
「クレーム対応などを考えると面倒がないのは大きなメーカーのものなのでしょうね。そうなると、新建材を並べただけの家になる」(つなが〜るズ・神田さん)
「自分の家の山から切った材木で家を建てるより、カタログから選んだほうが安くあがりますしね。不思議なことです」(つなが〜るズ平山さん)
それでも方法はあると平山さん。自分で家を直した時、断熱材にしたもみ殻は、近くのJAでもらったもの。
「大きな袋を持って、もみすり機の下で受け止めなくちゃいけないとか、それをいくつも運ばなければいけないという労力はいりますが」(平山さん)
とくに、小舞土壁ならば、「ちょっと習えば、共に作業ができます」(つなが〜るズ・林さん)。土を練ったり、竹を組んだり、それほど専門性を必要としなくて、みんなで一緒にできる仕事なのだという。むしろ金銭的なことよりも、いろいろな知恵を借りたり人手を頼んだり、必要な情報を得ようとする意欲と、人とのネットワークが重要となる。
『クロワッサン』937号より
●つながる〜ズ 建築設計事務所を主宰する、今の時代にあるべき木の建築を追い求める神田雅子さん、伝統を今に生かす木組みと職人技術による住宅を手がける林美樹さん、幕末の長屋を拠点に歴史ある町の再生に取り組む住宅ライターの平山友子さん、シックハウスの専門家である濱田ゆかりさんの4人によるユニット。東日本大震災後、SNSを通じて親交を深め、環境に配慮した暮らしにまつわる提案などの活動を推進中。著書に、『くさる家に住む。』(六耀社)。
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