林真理子さんとお金の話
「使ったお金はすべて糧になる」
投資?していません。もっとお金を貯めておくべきでした
人生で最大の買い物といえば、家ですよね。私も同じです。最初は原宿のマンション。続けて購入したカナダ・バンクーバーの別荘はプール付きの豪邸でした。自分が利用したのはほんの数回ですが、両親や夫の家族は気に入って行っていましたね。その後、東京に自宅を建てるとき、頭金は1割あればいいだろうと融資を申し込んだら、自由業は半分ぐらい自己資金がないとダメと断られたんです! すぐにバンクーバーの家を売って資金を作り、まずは土地を購入。
その後、小説『不機嫌な果実』がヒットしたおかげで家も完成、その後ローンも返しました。その次は軽井沢の別荘も縁あって手に入れました。でもせっかく買ったのに、子どもは誘っても嫌がる。行ったとして、掃除をしなければいけないし、ごはんも三食作らなければで、少しも休めません。軽井沢避暑生活なんて、夢のまた夢。それにしても、もっと本が売れた時代にお金を貯め、増やす努力をしておくべきでした。きちんと貯めて、マンションを一棟ぐらい買っておけばよかった……。いまの反省点です。
31歳のとき、これからはファーストクラスに乗る人生にしようと決意しました
31歳で直木賞を取った年、リオのカーニバルの取材に行くとき、初めてファーストクラスに乗ったんです。そこでの特別感やサービスの心地よさに酔いしれ、「これからは一生ファーストクラスに乗る人間になろう」と決心。
プライベートの旅行のときはファーストクラスのチケットを買い、取材旅行のときは、用意してくれたチケットとの差額を自分で払ってアップグレードしていました。ファーストクラスでは隣に財界の有名人やどこかの国の大使がいらっしゃることもしばしばありましたね。
30代の私は思い切り背伸びしていたんです。いまはもうほとんど乗ることはないですが、いい体験でした。
お金を払って得た経験を、今後も作品に生かしていきたいですね。
『クロワッサン』928号(2016年7月10日号)より
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