プラスワン講座 第16回『高峰秀子の引き出し』から学ぶ、女性の生き方 報告レポート
没後5年を迎えてもなお人気が衰えず、「名随筆家」としてもファンが多い昭和の大女優・高峰秀子さん。養女である斎藤明美さんが、高峰さんの審美眼や心の持ちよう、「なぜ、高峰さんは年をとるほどに美しかったのか」などについて語りました。
まず、斎藤さんは、自著である『高峰秀子の流儀』の表紙の写真(当時72歳)について、俳優の故・緒形拳さんが、「(写真の高峰さんは)神のようだと、こういう顔になりたい」と語ったエピソードを紹介。
「高峰の写真は、人に語りかけるのです。それは、内面、生き方、ものの考え方が出るからだと思いますね」
高峰さんは「徒然草」が大好きだったといいます。斎藤さんは、第72段の一節を紹介しながら次のように話しました。
「徒然草で兼好法師は、多くて見苦しくないものは、本、ちりだけで、あとは全部見苦しいと記しています。つまり、年をとるとどんどんものが多くなり、身動きできなくなるんですね。高峰は、そうではなくて、年をとるごとに引き算の人生でした。女優引退後は、家を小さな家に建て直し、150セットあった珈琲カップセットを処分して2組だけに。家財道具や洋服は10分の1にして、映画賞のトロフィーも全部捨ててしまったそうです。台所には『使っているんですか』?と聞いてしまったくらい何も置いていない。3つあった応接間をなくして、人間関係も整理しました。お手伝いさんや運転手も解散して、身の振り方を聞いてその後の生活が困らないように世話をしました。高峰が最後に望んでいたのは、『無一物』。それが人間にとって一番美しいと思っていたのでしょう」
さらに、「化粧も薄く普段は素顔でしたが、色が白くとても美しかった。人に世話をかけることや面倒をかけることが嫌いな人でした。それから、決められた時間に自分が決めたことをする。一切乱れのない規則正しい生活をしていました」とも。
斎藤さんは、高峰さんから「自己愛と自分を大切にすることとは違う」ということを学んだといいます。
「人間は、よく思われたい、好かれたい、認めてもらいたいという気持ちの固まりでしょう。でも、高峰は本当に欲望のない人。他人に何も求めない、どう思われたって構わない。『人の時間を奪うことは罪悪です』とハッキリ言う寡黙な人。人間をとても大事にする人でしたね。私が『自分から望んでしたことは結婚だけですか?』と聞いたときは、『そうね』と。また、あるときは『私は心のノートを真っ白にしておきたいの』といったんです。高峰らしい表現だと思いました」
人は年をとるごとに、顔にも、服装にも、食べ方にも、すべてに人生が出てしまうものだと斎藤さん。最後に、「高峰は、慎重であり、用心深く、思慮深く、ユーモアがあってせっかちで……。さまざまな矛盾したところをもっている人でしたけれど、私は心から尊敬しています。あと何百年行きても、こういう人には出会えない。生まれ変わったら会えるかもしれない」と結びました。
トークショーの後は、斎藤さんのサイン会。参加者一人ひとりと言葉をかわしながら、著書にサインをしてくださった斎藤さん。参加者の皆さんは、満足げな表情で会場を後にしました。
高峰秀子さんの生前のさまざまなエピソードの中から、女性の生き方や今の時代を生きるヒントを得た今回の講座。斎藤明美さんの著書『高峰秀子の引き出し』(マガジンハウス)も、ぜひご覧になってみてください。好評発売中です!

斎藤明美さん
【講師プロフィール】

日時:平成27年4月7日(火) 13時30分~15時00分
渋谷・カルチャーワークス(東京都渋谷区神南1-12-10)
定員:20名
年に1、2回行われる「クロワッサン学園」とは別に、クロワッサン倶楽部の会員のみなさまを集めて、月1回程度、都内のカルチャースクールなどで小規模の講演会や講習を行います。イベントの参加者募集は倶楽部会員の限定メルマガから行っております。
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