つながりのバトンをかたちに。ちがいは境界ではなく、輪郭になる──髙橋直子さん 人生をひらくケア(3)
撮影・濱津和貴 構成&文・殿井悠子
日除けや冷え対策にも便利なシアーカーディガン
コットン100%で軽くて涼しい素材ながら、日差しや冷房の冷えからもしっかり守ってくれるカーディガン。これから暑くなる季節に持っておきたい、心強い1枚です。
「一歩だけ、外に出て話してみたらいいかもしれないよ」
それは、同じように難病のある子どもを育てる人から、かけられた言葉だった。当時の髙橋直子さんは、娘・輝莉ちゃんの病気と向き合うなかで、「守らなければ」という思いを強く持ちすぎていた。誰にも頼れず、すべてを一人で抱え込もうとした。外に出る心の余裕もなく、気づけば世界は小さく閉じていた。
けれど、その言葉に背中を押されるように、ほんの少しだけ外に出てみると、何かが変わった。
「一人じゃないんだと思えたんです。同じように感じている人がいるって」
誰かに話すこと。誰かの話を聞くこと。それだけで、心の重さが少しずつほどけていった。
「つながりって、特別なものじゃなくていいんだと思いました」
その実感は、髙橋さんの中に深く残った。それはやがて、あるたしかな思いへと変わっていく。
「輝莉たちは、そのままで、かけがえのない存在だと伝えていきたいと思うようになりました」
その思いをかたちにして誰かに手渡していきたいと考えたとき、これまで仕事として向き合ってきた「服づくり」が自然と結びついた。
髙橋さんは英国の大学院でユニバーサルデザインを研究し、その後、イッセイミヤケで約19年にわたり、ブランド運営や商品企画に携わってきた。服が人に与える影響を、現場で見続けてきた経験がある。
「服って、ただ着るものではなくて、その人の気持ちを支えるものでもあるんです」
着心地や動きやすさだけでなく、「自分で選べる」ということ。その積み重ねが、小さな自信や安心につながっていく。
「“そのままの自分でいい”と思える感覚を、服を通して届けたい」
そうして生まれたのが、アパレルブランド「zutto matsurika」だ。
障がいの有無や年齢、国籍に関係なく、それぞれが自分らしくいられること。誰かに合わせるのではなく、そのままの自分で、同じ空間にいられること。その光景を、現実として見せたいと思った。「zutto matsurika」の服は、そのための“手段”でもある。
装いを通して、人と人がゆるやかにつながっていく。かつて、一歩外に出たときに広がった、扉の先の世界。髙橋さんはいま、そのバトンを手渡す側にいる。
『クロワッサン』1164号より
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