国宝も、向付も。懐石の器に出合う展覧会「美を味わう ― 懐石のうつわと茶の湯」展
写真・文 久保田千晴
懐石の器に光を当てた、はじめての企画展
今回の展覧会のテーマは、美術館開館以来初めての企画となる「懐石の器」。
懐石とは、正式な茶会である“茶事”のなかで、抹茶をいただく前に供される料理のこと。その後に続く濃茶や薄茶をおいしく味わうために、空腹をやわらげ、心身を整える役割があるのだそう。美術館の展示というと、まず作品そのものの美しさに目が向きますが、今回は「食べるための器」に注目しているのが新鮮です。
器を見ながら、ひと皿を想像する
この展覧会のおもしろさは、器をただ美術品として眺めるだけで終わらないところです。
料理が盛られてこそ完成する懐石の器は、どんな料理が盛られるのか、どの向きで置かれるのか、食べ終えたあとにどんな模様が見えてくるのか……。そんなことを想像しながら見ていると、ケースの中の器がぐっと身近に感じられます。
なかでも懐石の華とされるのが「向付」。最初の菜を盛るための器で、懐石の始まりから終わりまで客の前にあり続ける特別な存在です。手に取って、顔の近くで眺めることも想定されているからこそ、形や絵付け、手ざわりにまで趣向がよく表れるのだとか。日本のものだけでなく、中国、朝鮮半島、オランダなど、土地も時代も異なる向付が並び、その幅広さにも驚かされます。
ほかにも、鉢や皿、酒器、菓子器にいたるまで、懐石の場で使われるさまざまな器が登場します。
一汁三菜を基本とする懐石の中では、目に映る美しさだけでなく、持ったときにしっくりと手に馴染み、食べる動きに無理を生じさせないようにすることも、器の大切な役割。そうした「使うための美しさ」に気づけるのも、この展覧会ならではです。
後半の展示では、茶道具の名品も
展覧会の最後の一室では、懐石の広がりに貢献した千利休や、利休が仕えた豊臣秀吉にゆかりのある茶道具の名品も登場。前期・後期で展示替えされる茶入もあり、会期中にもう一度訪れたくなる仕掛けになっています。国宝《曜変天目(稲葉天目)》や、長次郎《黒楽茶碗 紙屋黒》が並ぶ構成も贅沢で、見応えたっぷりです。
鑑賞後は、展覧会限定のコラボケーキセットと鑑賞チケットが一緒になった「ミュージアム&カフェチケット」を使って、余韻にひたるティータイムもおすすめです。展示を見たあとだからこそ、“味わう”という言葉が少し違って感じられるかもしれません。
※「ミュージアム&カフェチケット」は事前の予約が必要です
※コラボケーキセットは「ミュージアム&カフェチケット」の予約者限定のメニューです
料理を引き立て、人をもてなし、場の空気まで整えてきた器の奥深さ。そんな世界に丸の内で気軽にふれられるのもうれしい発見です。料理好きの方はもちろん、茶の湯に詳しくない方にも、ぜひのぞいてみてほしい展覧会です。
「美を味わう ― 懐石のうつわと茶の湯」
会期:前期2026年4月7日(火)〜5月6日(水・祝)、後期5月8日(金)〜6月14日(日)
会場:静嘉堂文庫美術館(東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1階)
開館時間:10時〜17時
※第4水曜日の4月22日、5月27日は20時まで開館
※6月12日(金)、13日(土)は19時まで開館
※入館は閉館の30分前まで
休館日:毎週月曜 ※ただし5月4日(月・祝)は開館、5月7日(木)は休館
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