迷うたびに何度でも思い出す。私を強くしてくれた特別な“言葉” vol.2
イラストレーション・花岡 幸 文・長谷川未緒
狭い門から入れ。滅びにいたる門は大きく、その道は広い。
──『新約聖書』マタイによる福音書7章13節より
辛酸なめ子さん 漫画家、コラムニスト
多くの人が選ぶ楽な道ではなく、困難な道を選んで努力すべきという聖書の教えです。高校時代、美術系の大学に進みたかったのですが、両親に反対され、くじけそうだったときにこの言葉を知り、美術系に進もうと決心。今でもふとしたときに心に浮かびますし、メジャーなものに巻かれそうなとき、自分を戒める言葉でもあります。
人を書いても、「あなた」は出る
──小説家・重松清さんからいただいた言葉
大平(おおだいら)一枝さん 文筆家
現在のライフワークである〈市井の人の台所を訪ね歩く〉という企画が動き出しつつあったときにかけていただいた言葉。長く続けたエッセイの連載が終わり、何を書いていこうかと心が彷徨っていたときでもあったため、「大丈夫、自信を持って堂々と、人を書いていきなさい」と背中を押していただいたように感じました。重松作品のように、人という存在の弱さや切なさ、そしてしなやかな強さを緻密に、丁寧に、魅力的に書いていきたいと思い続けています。
人生には、2度3度、(時にはもっと)自分の前に龍が通ることがあります。
──服部みれい著『わたしらしく働く!』より
牟田(むた)都子さん 校正者
龍とはチャンスのこと。龍が「どうぞ、背中にお乗りください」と呼びかけてくるように、人生の分岐点となるような好機が巡ってきたとき、それを見逃さないこと。こわくても勇気をふるい起こして龍の背中に乗ってしまえば、想像をはるかに超えるくらい遠くまで行ける。大きな決断を迫られるたび、自分に言い聞かせています。
パンドラの箱の底にあるのは「希望」ではなく、「寛容」のような気がする──
──尊敬する友人がくれたメッセージ
纐纈(はなぶさ)あやさん 映画監督
コロナ感染拡大で撮影が中断され、実父と義父、友人を見送り、さらに家庭内でも困難が続きました。精根尽き果て、人を許すこと、認め合うこと、受け入れることに向き合う中で、友人から届いたこの言葉は、心の深くまで沁みわたり、まさに希望に思えました。これからも他者と関わり続ける人生の道標となってくれると思います。
はなははな
──モデルの先輩が言ってくれた言葉
はなさん モデル
17歳でモデルの仕事を始めたのですが、美しいモデルさんやスタイルの良いモデルさんに囲まれ、いろいろとコンプレックスを感じていたんです。そんなときに先輩から言われたこの言葉に、とても勇気をもらいました。人と違うことは当たり前なのだから、自分にしかない個性を育んでいこうと思えるようになりました。
人生の電車は、たいへん、乗り換えの多い旅なのかもしれない。
田辺聖子著『乗り換えの多い旅』より
ぬえさん つぶやき人
家族を失って泣き暮らしていたときにこの言葉と出会い、目の前に車窓と明るく晴れ渡った青空が見えた気がして、立ち直るきっかけとなりました。年齢を重ねるとできなくなること、諦めねばならないことが増えます。そうした変化に直面したときに「乗り換え駅に到着したんだな」と思えば楽になり、切り替えて次に進むことができます。
で、何を書こうと思っているの?
──出版社時代の先輩が、門出に贈ってくれた言葉
武田砂鉄さん ライター
出版社を辞めてライターに転身した際、報告をすると必ず「どうやって食っていくの?」「まぁ、物書き一本だと大変だと思うけどね……」と言われました。そんななか、ある先輩が、「いいじゃんいいじゃん。で、何を書こうと思っているの?」と前のめりで、生活をどうするの、ではなく、何を書こうと思っているのかを真っ先に聞いてくれた。あの時そう言ってくれたことに対して、自分なりに応えたいな、とずっと思っています。
『クロワッサン』1156号より
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