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『いつもとなりにいるから 日本と韓国、アートの80年』横浜美術館──複雑に絡み合う日本と韓国の歴史を反映したアート

青野尚子のアート散歩。今回は、日韓国交正常化60年の節目に両国のアートを通して、改めて過去と未来を探ろうという展覧会。近年では両国に限らず世界的に社会問題に目を向け、表現の題材とするアーティストが増えている。

文・青野尚子

朴栖甫《遺伝質1-68》 1968年 国立現代美術館蔵(c)PARKSEOBO FOUNDATION
朴栖甫《遺伝質1-68》 1968年 国立現代美術館蔵(c)PARKSEOBO FOUNDATION

隣り合う日本と韓国はこれまで互いに刺激し合い、歴史を重ねてきた。『いつもとなりにいるから』は日韓国交正常化60年の節目に両国のアートを通して、改めて過去と未来を探ろうという展覧会だ。

展覧会は1945年の終戦から1965年の日韓国交正常化までの20年間から始まる。展覧会では在日コリアンや2010年代以降の作品からこの時代を振り返る。1950年代にはビデオ・アーティスト、ナムジュン・パイクが来日。彼は後にドイツやアメリカに渡るが、日本語が堪能だったこともあり、日本のアーティストと交流を続けた。

1965年の日韓国交正常化からは両国で相手国のアートを紹介する動きが高まる。1990年に韓国政府の国費留学生として渡韓した中村政人は回転するサインポール(トコヤマーク)が日韓で異なる業種を表すことがあるのを知って、サインポールを素材とした作品を作った。同時代のソウルでは日本でも発表の機会が多いイ・ブルやチェ・ジョンファらが活動を始めている。近年では両国に限らず世界的に社会問題に目を向け、表現の題材とするアーティストが増えている。武蔵野美術大学と隣り合う朝鮮大学校を隔てる壁に橋を架けた《区画壁を跨ぐ橋のドローイング》はその一つだ。

中村政人《トコヤマーク/ソウル》1992年 個人蔵
中村政人《トコヤマーク/ソウル》1992年 個人蔵

近しい相手を見つめることは自分自身を振り返ることになる。もっとも近い外国である韓国と日本のアートから、二つの国の未来が見えてくる。

『いつもとなりにいるから 日本と韓国、アートの80年』

灰原千晶、李晶玉《区画壁を跨ぐ橋のドローイング》 2015年 個人蔵
灰原千晶、李晶玉《区画壁を跨ぐ橋のドローイング》 2015年 個人蔵

横浜美術館 開催中〜2026年3月22日(日)

戦後の日韓美術の関係をひもとく初めての展覧会。韓国の国立現代美術館から優品19点が来日する。日本初公開の作品、この展覧会のための新作も見逃せない。

横浜美術館(神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1) TEL:045-221-0300 10時~18時 木曜、12月29日~2026年1月3日休 入館料一般2,000円ほか
  • 青野尚子 さん (あおの・なおこ)

    アート・建築関係のライター

    著書に『超絶技巧の西洋美術史』(池上英洋さんとの共著、新星出版社)など。

『クロワッサン』1155号より

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