『六本木クロッシング展2025:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠』森美術館──アーティストの目から見る「時間」とは?
青野尚子のアート散歩。今回は、3年ごとに日本の現代美術シーンを“定点観測”するように開かれてきた「六本木クロッシング」展。展覧会のサブタイトル「時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」はインドネシアの現代詩人、サパルディ・ジョコ・ダモノの詩の一節からとられたもの。
文・青野尚子
3年ごとに日本の現代美術シーンを“定点観測”するように開かれてきた「六本木クロッシング」展。8回目の今回は森美術館のキュレーターにアジアのゲストキュレーター2名を迎え、21組の作家を紹介する。日本で活動する、または日本にルーツがあり、海外で活躍するアーティストたちだ。
今回のテーマは「時間」。時間を多角的に解釈することで見えてくるものに注目する。沖潤子の繊細な刺繡作品にはひと針ひと針、糸を縫い込んでいく時間が積み重なっている。和田礼治郎の立体作品にはブランデーが封入されている。果実を発酵させ、蒸留することで生まれる液体を通じて時間や生と死といった問題を提起する。桑田卓郎は日本の陶芸の伝統的な技術や歴史を引用しながら、時代を超える美を作り出す。ケリー・アカシの詩的な作品には身体や記憶、刹那と永遠といったテーマが宿る。マレーシア出身のシュシ・スライマンは長年にわたって広島県尾道市を拠点に土地の歴史やコミュニティに根ざした活動を続けている。
展覧会のサブタイトル「時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」はインドネシアの現代詩人、サパルディ・ジョコ・ダモノの詩の一節からとられたもの。時間の大切さと、時間に追われて「生きる」ことの本質を見失ってしまう危うさの二つの側面を表す。時間や、時間との関係をどうとらえるのか、そんなことも思わせる展覧会だ。
『六本木クロッシング展2025:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠』
森美術館 12月3日(水)~2026年3月29日(日)
出展アーティストはほかに廣直高、ひがれお、北澤潤、荒木悠など。1980~’90年代生まれの作家が目立つ、これからの活躍にも注目したい顔ぶれだ。
森美術館(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階) TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル) 10時~22時(火曜、12月8日は~17時、12月30日は~22時) 会期中無休 入館料一般2,000円ほか
『クロワッサン』1154号より
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