『ロンドン、ドッグパーク探偵団』ブレイク・マーラ 著 高橋恭美子 訳──殺人事件の謎に挑む愛犬家の仲間たち
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
舞台はイースト・ロンドン。古い倉庫を改装したフラットでミニチュア・ダックスフントのクラウスと暮らす起業家のルイーズは、とある早朝、犬の散歩中にドッグランの茂みで男性の死体を発見する(正確にいうと、最初に発見したのは犬たちである)。故人はかつての犬仲間で、彼が愛犬を喪ってからは疎遠になっていたフィルだった。状況からして事件性の疑いは濃厚。同時期に別の仲間がチンピラに襲われたり、隣人の犬が公園で毒物を食べてしまったりと、不審な事件が相次いだため、ルイーズは犬仲間たちとSNSを駆使して事件の真相を探り始める。
人間だけでなく犬も多数登場、それぞれの個性が楽しい。調査のために行動を起こす彼女たちが、出掛けるたびに飼い犬を連れていくなり誰かに預けるなりする様子や、犬同伴で入れる飲食店での振る舞いも細やかに描かれ、犬との暮らしがリアルに伝わってくる。状況も刻々と変化し、もちろん謎解き要素でも牽引力がある。
海外ミステリって案外、途中で主人公の飼い犬が殺されることが多いんですよ。正体不明の犯人による脅しの手段として。でもこれは大丈夫だった! 犬好きの方々、安心して本書を開いてください。
『クロワッサン』1150号より
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