第2の人生で、楽しく機嫌よく働く方法は? 木下紫乃さん【家計を守る、60歳以降の働き方】
撮影・土佐麻理子 文・小沢緑子
“お金” だけにフォーカスしない。
場所を変えれば、自分の持ち味が発揮できる。
「どうせムリ」は呪いの言葉。
第2の人生で、楽しく機嫌よく働く方法は?
60代以降の第2の人生において、お金の不安に縛られず、心豊かに過ごすために“細く長く働き続ける”ことは有望な選択肢のひとつ。キャリア支援を行うプロで、赤坂で昼間に開店する“昼スナック”の週1ママとして、仕事に悩む人たちの声に耳を傾けているのが木下紫乃さん。
「昼スナックに来てくれる人の話を聞いていても、今は定年後や再雇用後も仕事を辞めてゆっくりするより、『もっと働きたい』と思っている人は多いですよ」
その理由は定年後も子どもの教育費などがかかるからという現実的な問題のほかにも、「『今まで会社のために頑張ってきたから、そろそろ自分が好きなことを仕事にしたい』と言う人が多いです」。
そんなとき、どんな助言を?
「50代以降になると、やりたいことを先送りすることは、若い頃とは比べものにならないほど有限の時間と体力をトレードオフ(犠牲)していることになるんです。自分が上りたい階段は自分で作るしかない。まずは情報収集でも誰かの体験談を聞きに行くのでもいいから『小さなことから行動して、最初の一歩を踏み出すことが大切!』と背中を押します」
自分が何をやりたいかまだわからず模索中の人には?
「長年同じ会社で同じメンバーと仕事をしていると役割が固定されて、自分の“持ち味”が発揮できなくなっていることがあります。そういうときは『会社とは違う場やコミュニティに一度身を置いてみて』と助言しています」
たとえば木下さんも、最近自ら手を挙げて、自宅マンションの理事会の副理事長にチャレンジ中。
「集まりの後に『Googleドキュメントにまとめておきますよ』みたいな、自分にとっては当たり前の作業も喜ばれたり。場を変えると、意外な自己発見があります」
収入面で踏み出せない人には?
「第2の人生でやりたいことを仕事にしている人は“仕事の報酬=お金”だけじゃなく、“新しい知り合いが増える”とか“社会貢献ができる”とか、トータルで考えていることが多い。それに定年後だとあと何年かで年金をもらえる年齢に。収入のハードルを緩めて、『自分が機嫌よく細く長く楽しく働ける仕事ならOK』と考え方を切り替えてもいいんじゃない? と言っています」
具体的に、人生後半の働き方を選ぶための入り口は3つあるという。1つ目は「もっと“自分のわがまま”に目を向けてあげる」、2つ目は「今まで生きてきた中で『自分の必殺技』とは?」を考える、3つ目は「これから誰と仕事をしたいか?」(下記参照)。
「この3つの入り口を通して出てきた答えを掛け合わせてみてください。私の場合、1つ目が『上司にもう指図されたくない』『朝の満員電車に乗りたくないし、夜はしっかり寝たい』(笑)。2つ目が『誰とでもすぐ仲良くなれる』。3つ目が『老若男女と楽しく過ごしたい』で、それらを掛け合わせたら『昼スナックだ!』と。そう閃いて、お店を実現させました」
さらに、こんなアドバイスも。
「自分がやりたいことがわかったら、くれぐれも『どうせムリ!』なんて“呪いの言葉”をかけないで。この言葉は禁句です。今の時代は仕事の環境もやり方も進化しているし、ムリかどうかは実際にやってみないとわからないでしょ。自分を信用してみてくださいね」
これからの働き方を選ぶための3つの入り口
1. もっと“自分のわがまま”に目を向けてあげよう
「会社や組織に属していると誰もが何かしら我慢していることがあります。『自分が本当にやりたいこと』、あるいは『何をやりたくないか』でもいいので忖度なく挙げてみて」
2. 今まで生きてきた中で「自分の必殺技」とは?
「自分の必殺技=持ち味や強みと思うものもどんどん挙げて。仕事のスキルだけでなく、“面倒見がいい”“意外とめげないタイプ”など、性格面を含めると出てきやすいです」
3. 「これから誰と仕事をしたいか」考えてみよう
「会社員のときは同僚も部下も上司も選べないので見逃しがちですが、人生後半ではこの入り口は重要。自分が一緒に仕事をしたい仲間や環境はどんな場にあるか一度考えてみて」
『クロワッサン』1146号より
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