【時代をつなぐ日常の名店。生涯現役、店主の心意気。】京都・森田良農園 おいでやす森田良彦さん
月日を重ねるほど美しい。70代の店主がしゃっきり気丈に迎えてくれる日常使いの名店とその心意気。
撮影・渡部健五 構成&文・中岡愛子
「わしは農業者やけど、 “生命維持産業”言うてる。」
森田良農園(もりたりょうのうえん) おいでやす
森田良彦さん
78歳
森田良彦さんの畑に足を踏み入れると、土と野菜のいい匂い。葉っぱのかたちも異なる2種類の大根。ふわっとあたたかく、体がほぐれる。
森田さんは、上賀茂で百年続く農家の3代目。4代目の息子とともに、「陽のある間」畑にいる。
「上賀茂はもともとすぐきの産地。うちもすぐきがメイン。練炭であたためた部屋で発酵させて、非加熱処理してるから、乳酸菌が生きたままなんや」
京都の冬の名物のひとつ、すぐき漬けは、農家がつくるもの。すぐきはすぐき菜といい、かぶらの一種。朴訥としゃべる森田さんの「すぐき漬け」は、「森田さんの野菜」ともども、料理人のファンも多いという。
注文を受けて新しい野菜づくりにも挑戦するなかで、畑近くの直売所「おいでやす」には、ほうれん草、紅心大根――旬の野菜や加工品が並ぶ。「農業は、生命維持産業。化学肥料はなるべく使わないのは当たり前。植物が最終的に土に還るように、人間が生きるために欠かせない農業の大切さを伝えたい」。森田さんの野菜は力強くも、どこかやさしい味がする。
◆京都市北区上賀茂池端町39・1
TEL.075・712・4889
営業時間:9時〜17時 不定休
『クロワッサン』1137号より
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