三十一文字の中に世界を閉じ込める——短歌を味わい、作ってみよう
歌集の出版が相次ぎ、SNSではZ世代が歌を詠んで発信するなど、ブームが続く短歌の世界。ふたりの人気歌人に学ぶ短歌の世界とは。
撮影・幸喜ひかり イラストレーション・浅妻健司 文・一寸木芳枝
ふたりのおすすめ短歌集と一首
加藤さんおすすめ
「人生は油断ならない 還暦の木箱に小さな恋のブローチ」
「俵さんの日常をすくい上げる感じといい、常に短歌に対する眼差しがある点に敬服しきり。そして恋愛も特別視するのではなく、生活の中にあるということを描かれているこの歌が素晴らしいです」
「わけもなく家出したくてたまらない 一人暮らしの部屋にいるのに」
「枡野さんの短歌は誰もが使う言葉で、言えなかった感情を具現化してくれているんです。この歌に初めて出合ったのはもう20年以上前ですが、いまだに思い出す時があります。私にとってお守りのような存在」
岡本さんおすすめ
「どこででも生きてはゆける地域のゴミ袋を買えば愛してるスペシャル」
「最初は、これ短歌?と思うんですが、読むうちにリズムが心地よくなっていくから不思議。“愛してるスペシャル”なんてフレーズ、自分からは絶対に出てこないと思うからこそ、その言語感覚に憧れます」
「靴紐を結ぶべく身を屈めれば全ての場所がスタートライン」
「山田先生は同い年ですが、僕にとっては師のような方。誰もが何げなくやっている動きすら、こんな広告コピーのような歌になるのがただただ、すごい。あとがきにも感銘を受けた僕にとって大事な一冊です」
『クロワッサン』1136号より
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