使いやすくて、旨味も引き出す!鍋の最適解を料理家が大検証
撮影・黒川ひろみ 文・一澤ひらり
牛すじ煮込み、圧力鍋と普通の鍋で作ってみたら意外な発見!
有賀 牛すじ煮込みは時間をかけないと作れないので敬遠されがちです。でも手間をかけたぶん牛すじがトロトロに柔らかくなって、スープも絶品。味をつける前のものを冷凍保存しておけば、おでんやカレーに入れたり、いろいろな料理に使えますから、一度はぜひ作ってみてほしいですね。
樋口 牛すじはひたすら気長に煮込むっていうのが基本です。コラーゲンがゼラチン化するのに時間がかかるから、短縮するには圧力鍋しか方法がないんです。そこでティファールの圧力鍋で「牛すじの洋風煮込み」を作ってみます。通常の半分以下の時間で完成しますよ。
有賀 それは早い! 私はル・クルーゼ(20cm)で1時間半ほど煮込んで「牛すじと大根のスープ」を作ります。牛すじは肉の臭みやアクを取るために、水から茹でてアクが出てきたら茹でこぼして洗い流す作業が必要ですが、あとは鍋に入れてコトコト煮込みます。
樋口 それが王道のやり方ですよね。僕のアク取りは熱湯で牛すじを1分茹でて、湯通しすればOKです。
有賀 えー、たったの1分!?
樋口 肉の臭みは主に脂質の酸化によるもので、アクは表面のたんぱく質が脂質を取り囲んで浮いてきたものです。だから熱湯で表面のたんぱく質を固めて洗えば、アクはあまり出ない。
有賀 なるほど。でも圧力鍋で煮ると、独特の味になりますよね。
樋口 においが揮発していかないんです。解消するには圧力鍋で牛すじを水と酒と玉ねぎで煮て、圧が抜けたら味つけをし、蓋を開けたまま15分弱火で煮る。さらにみりん、みそなどの発酵調味料を入れると緩和されます。
有賀 それは知りませんでした。大切なコツですね。さて、いろいろ話をしているうちに煮込みができましたよ。
樋口 うーん、やっぱりじっくり煮込んだ有賀さんのスープは滋味にあふれているし、牛すじがおいしいですね。
有賀 樋口さんの煮込みは短時間で作ったとは思えないほど牛すじが柔らかくて、旨みが濃厚。ちょっとびっくり。
樋口 どんな鍋でもプロセスをちゃんと踏めばおいしくできます。鍋には一長一短があるから、それに向いた料理をするのがおいしく作る極意ですね。
有賀 だからこそ、「この鍋が生活の中にあると楽しい」と思えるような自分にしっくりなじむ鍋を選びたいですね。
牛すじを2つの鍋で煮込んでみる
樋口さん:牛すじの洋風煮込み
どうしても時間をかける必要のある食材こそ、使う鍋を見きわめて。湯通しした牛すじとくし形に切った玉ねぎをひたひた程度の水、酒と一緒に圧力鍋に入れ、加熱する。圧がかかったら弱火で20分煮込む。
火を止めて圧が抜けるまで放置。蓋を開け、デミグラスソースとみりん、みそ、醤油を加え、15分煮込む。
有賀さん:牛すじと大根のスープ
一口サイズに切った牛すじを鍋に入れ、水を加えて煮立てる。このくらいアクが出てきたらザルに上げて流水で洗い流す。
鍋も洗ってふたたび牛すじを入れ、水、酒、しょうがとねぎを入れて45分間煮る。大根と塩を加えてさらに45分煮る。
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