いよいよ1月5日から。2025年大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)〜』(NHK)を支えるスタッフにインタビュー vol.1【吉原風俗考証担当の時代考証家・山田順子さん】
「しぶとくて強い、これまでにない吉原の女たちを描きます」吉原風俗考証担当・山田順子さん
―このドラマの舞台は江戸時代中期です。時代考証家の山田さんにとってどのようなところが魅力ですか?
「江戸時代って265年あるんですけれど、大河ドラマで描かれがちなのは初期の徳川家康の時代や幕末で、真ん中の頃はあまりやりません。けれど皆さんが想像する江戸時代の活気のある雰囲気とか江戸っ子はこの時代のものなんです。そういう江戸らしい江戸をきちっと描けるという意味で、大変やりがいがありますね」
―蔦重が生きていた時代の吉原遊廓はどういう状況でしたか?
「最初は豪商やお殿さまが遊ぶところでしたが、そのあとで町民が遊ぶという時代になる。深川に岡場所(非公認の遊廓)ができてぐっと庶民的な商売を始めて、それに対抗するために吉原も高級な店は格式をかろうじて持たせつつ、手軽な中店、小店もできて…。恐らく皆さんが想像するような吉原ですね。お殿さまやお金持ちはお茶屋さんでどの子が売れているとか気性がどうだとかいう情報を得ていたわけですが、その情報を庶民のために発信したのが蔦重です」
―吉原を描くにあたり、どのようなことを考えていますか?
「制度・慣習が残っている時代を、きちっとリアルに見せたい。だから予断をもって演出するのではなくリアルに追究したいです。現実であり、歴史。とにかく正確な吉原を目指したので、美術チームも頑張って(史実通りに)道幅11mの仲の町のセットを作ってくれて、映像の技術で長さも200mに見えるようにしてくれました。
町がリアルだと他のものも全て正確に作らないといけないわけで、通りに面した店の内部も全部作って、通りを歩く人も、時間帯によってどういう人が何人くらい歩いているなどを変えています。リアルという意味ではすごく自信を持っています」
―<大河ドラマで吉原を描く>ということについては?
「主人公に蔦屋重三郎を選んだのだから。そこで生まれ育った人を描くのに、吉原だからダメよ、ということはないですよね。出てくるのならなるべくリアルにやりましょう、ということです。美化もしません」
―オファーのきっかけはどのようなものでしょう。
「私、脚本の森下佳子さんとは一種の盟友なんですよ。彼女が書く時代劇の多くの作品で時代考証しているし。彼女が書くと言ったら無条件で、ってわけでもないですけど。実は吉原はかねてから彼女と私との間のテーマで。以前江戸時代を描く『JIN―仁―』(TBS系)というドラマで一緒に仕事をしたんですが、2年くらい前に、今回の大河とは関係なく『もういちどきちんと吉原を描きたい。今までにない吉原を描きたいね』という話をしていました。今回のお話は近世美術史考証を担当されている松嶋雅人先生の、森下さんと私が描く吉原を見てみたいというご推薦なんです。台本を読んだけど、相変わらずのいい台本ですよね。キレがあって言葉に深みがあって。ここで一発、ってところでのセリフがいい。うん、いい調子、いい調子、これだよね!と思っています」
―当時の吉原の女性たちはどのように生きていたのでしょう。
「森下さんと最初に話していたのは、『しぶとくて強い女を描こう』。吉原の女たちは地方出身者も多く子どもの頃に売られてきたり、病気で死ぬ人も多かったりして、人身売買の被害者です。けれどその中で、自分の力だけで顧客を引っ張って商売をして借金を返し、身請けをしてもらったり、店に残って経営に参加する者もいる。それって全部女の実力じゃん!って。悲惨な場面も登場しますが、彼女たちなりにいきいきと生きているわけで、メソメソしてばかりではない。
悲劇の被害者ではありますよ。27歳で年季が明けるまで吉原から出られない。これは彼女たちだけの話ではないんです。当時の武士だって自由に藩から出られないわけで。みんな身分社会の外には出られないんです。その中でどういうふうに生きるか、ですよ。自分の運命を知りながら、ちゃんと出ていって次に行こうとする。吉原の女たちのそういう強いところが描きたいですね」
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)〜』
2025年1月5日(日)放送開始〈初回15分拡大〉
NHK総合20時〜
(BSP4K では12時15分〜・18時〜、BSでは18時〜)
主演・横浜流星(蔦屋重三郎役) 脚本・森下佳子
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