フードライター・小寺慶子さんの【土地の思い出と共に心に残る、旅先での一期一会】
イラストレーション・本田しずまる 文・黒澤 彩
小寺慶子(こでら・けいこ)さん
フードライター
国内外を食べ歩き、レストラン誌、カルチャー誌などで記事を執筆。肉料理をこよなく愛する肉食系ライター。
(新潟)『いろは肉店』の肉だんご
毎年、長岡の花火大会に行くのが恒例になっているのですが、帰りにタイミングが合えば「いろは肉店」に立ち寄って、絶品肉だんごとメンチカツをおみやげに買います。
最初は、長岡で愛されている「ガトウ専科」という洋菓子店の社長にこの店のことを教えていただきました。肉だんごのビジュアルと味に大興奮して、自分でも次の日にお店へ行ったのを覚えています。精肉はもちろん、ミートパイや揚げ物などおいしそうなお惣菜がショーケースにずらりと並んでいて、眺めているだけでとても幸せな気持ちになります。
肉だんごの特徴は、なんといってもその大きさ。3つの大ぶりなだんごが串刺しになっており、頬張ると大人も童心にかえれます。充実した肉感と甘じょっぱいタレのコンビネーションがあとを引くおいしさ。これがひと串120円とは! 何度食べても感動します。
新潟県長岡市谷内1・4・33
TEL.0258・52・2954 日・月曜休
(沖縄)『新垣(あらかき)カミ菓子店』の ちんすこう
沖縄のおみやげといえば、ちんすこうはあまりにも有名ですが、今年、現地のカメラマンに教えてもらって初めて行った「新垣カミ菓子店」は、ちんすこうのイメージががらりと変わるくらい美味でした。なんでも、琉球王朝時代に王府の包丁役(料理方)だった祖先から受け継いでいる製法なのだとか。手作りで大量生産はできないため、空港や国際通りあたりの土産物店では買えません。でも、わざわざ首里の店舗へ買いに行く価値あり! 店内の小さな工房で手作りしている様子も見られます。
あまりに感動したので、沖縄で酒場を営む友人に差し入れたら「地元の人間にちんすこうなんて、いい度胸してるわね」と言われましたが(笑)、後日、「あんなに美味しいちんすこうは初めて食べた」と連絡がきてうれしかったです。
沖縄県那覇市首里儀保町2・13
TEL.098・886・3081
(韓国)金井山城(クムジョンサンソン)のマッコリ
6月に初めて釜山に行きました。同行した友人が「山奥にマッコリ村があるらしい」というので、電車とバスとタクシーを乗り継いで金井山の山城村へ。この標高400mの村で造られている金井山城マッコリは、麹を足で踏み固めるという伝統的な製法で造られていて、韓国のマッコリのなかで民俗酒と認定された第1号なのだとか。韓国のマッコリ好きのあいだでは有名な地酒のようです。
オモニ(お母さん)がワンオペしているチヂミ店(店というか小屋?)と焼肉店をハシゴして飲んだ金井山城マッコリはとても美味しかったです。酸味があって、とろりと濃厚。ぜひ買って帰ろうと、山の売店で8本購入し、友人と手分けして運びました。ところが、ホテルの冷蔵庫で保管しておいたら液漏れして日本まで持って帰ることは叶わず……。次回は策を講じて、無事に持ち帰りたい!
『クロワッサン』1131号より
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