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料理家、作家・樋口直哉さんの【土地の思い出と共に心に残る、旅先での一期一会】

【買ってよかった2024 クロワッサンの太鼓判! 旅先の逸品部門】伝統食やローカルフード、工芸品などに出合うのは旅の醍醐味。旅好きの嗅覚で見つけたお気に入りを聞きました。

イラストレーション・本田しずまる 文・黒澤 彩

樋口直哉(ひぐち・なおや)さん

料理家、作家
科学の考え方で料理をよりおいしく作る方法を提案。著書『もっとおいしく作れたら』『樋口直哉のあたらしいソース』など。

(広島)『藤本農園』 藤本さんのお米と合鴨

食べてみんさいわしらの作った東城米(アイガモ農法米)2kg 2,550円。
食べてみんさいわしらの作った東城米(アイガモ農法米)2kg 2,550円。

長年、合鴨農法に取り組んできた藤本農園さん。農薬、化学肥料を一切使わずに育てたお米が高い評価を受けています。

お米自体は以前に食べていて、もちろんおいしかった。ようやく今年、農園を訪れることができました。

農園がある庄原市東城町(とうじょうちょう)は、田んぼと川の景色が広がるいいところでした。合鴨たちが田んぼで働いていますが、大きく成長すると稲を倒してしまうので働けなくなります。その合鴨をどうするかというと、食べるわけですね。お昼にごちそうになったご飯と合鴨のおでんが、めちゃくちゃおいしかったです。小さな命が働いてくれるおかげでおいしいお米を食べられて、それに感謝しながら肉をいただくというのは、食の根幹の部分。印象に残っている旅の思い出です。

鴨小舎(こや)の鴨たちはガーガーと鳴いてかわいいんですよ。ちなみに小舎にはアヒルもいて、アヒルはリーダー的存在らしいです。

広島県庄原市東城町粟田2939 藤本農園内 食と農の情報発信基地「あいがも屋」  https://w…

広島県庄原市東城町粟田2939 藤本農園内 食と農の情報発信基地「あいがも屋」 
https://www.aigamoya.net/

(徳島)『服部製糖所』の和三盆の糖蜜

徳島県のおいしいものを探る旅をしていたときに出合いました。阿波和三盆糖といえば、砂糖の最高峰。糖蜜を分離させて作るのですが、明確な規定がないため、製糖所によってそれぞれ味わいが違います。産地に行くといろいろと発見があるもので、サトウキビが在来種だというのにも驚きました。「竹糖」という品種で、沖縄などで栽培されるものと比べて小さく、収穫量も少ないため、とても希少だそうです。

服部製糖所は1864年創業の歴史ある製糖所。竹糖の自社畑も所有しています。和三盆糖を使ったシュークリームやソフトクリームを味わえるスイーツ店が併設されていて、そこも良き場所でした。買って帰ったものは、サトウキビの搾り汁を煮詰めた糖蜜(モラセス)。甘みだけではなくやや酸味もあるのが特長で、料理にも使えます。バーベキューソースなどにもよさそうです。

和三盆糖蜜(瓶) 125g 1,404円。
和三盆糖蜜(瓶) 125g 1,404円。

徳島県阿波市吉野町西条東姥御前270 
TEL.088・696・5270

(愛媛)石鎚黒茶 3年熟成

生産現場を取材するために愛媛へ赴きました。日本に発酵茶は4つあり、そのうちの1つが愛媛の石鎚山(いしづちさん)の麓で代々受け継がれてきた石鎚黒茶です(ほかは富山県のバタバタ茶、徳島県の阿波番茶、高知県の碁石茶)。珍しい乳酸菌による二段発酵茶であることから、その製造技術は国の重要無形民俗文化財にも指定されています。食中茶として、穏やかな酸味が料理をおいしくしてくれます。

普通なら茶葉を〝摘む〟ところ、ここでは枝ごと切って軽トラックで運ぶというワイルドな収穫風景でした。

枝を切り揃え洗浄した茶葉を釜で蒸し、それを台に広げて枝を取り除いたら、山で一次発酵。その後ナイロン袋に入れ、空気を抜きながらポリバケツに押し込み二次発酵(乳酸菌は嫌気性発酵。漬物と同じです)。気温の低い山の上までトラックで運んで発酵させるというところに面白みを感じました。

収穫は夏の暑い時期。室内で飲んだ冷たい石鎚黒茶のおいしかったことといったら!

石鎚黒茶3年熟成茶葉 20g 2,200円。
石鎚黒茶3年熟成茶葉 20g 2,200円。

「石鎚黒茶さつき会」 愛媛県西条市小松町北川396
https://kurocha.buyshop.jp/

『クロワッサン』1131号より

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