47年の歳月を経て封が解かれた、細野晴臣制作の幻の逸品。【高橋芳朗の暮らしのプレイリスト】
リンダ・キャリエール「Linda Carriere」
47年の歳月を経て封が解かれた、細野晴臣制作の幻の逸品。
イエロー・マジック・オーケストラ結成直前の細野晴臣のプロデュースのもと、完成を迎えながらもお蔵入りの憂き目に遭っていた作品が47年の歳月を経てようやく陽の目を見ることになりました。ニューオーリンズ生まれのシンガー、リンダ・キャリエールのファーストアルバム『Linda Carriere』です。
当時ロサンゼルスのクラブで歌っていたリンダのアルバムの構想が浮上したのは、1977年のこと。細野とプロデューサー契約を結んだアルファレコードが、その記念すべき最初のリリースとして彼と企画したのがそもそもの始まりでした。
あえてアメリカ人シンガーのリンダに白羽の矢を立てた細野はワールドワイドに発信することを念頭に置いて制作を進めましたが、世界戦略を担う海外スタッフから芳しい評価を得られずアルバムはあえなく幻となってしまいます。
それから47年。封が解かれることは永遠に叶わないと思われていた、伝説のアルバムの奇跡の商品化。
細野をはじめ、山下達郎、吉田美奈子、矢野顕子、佐藤博ら、以降日本のポップスをリードしていく若き俊英たちの才能が注がれた洒脱なソウルミュージックは、時間の経過をものともせずに凜とした麗しさを保ち続けています。シティポップの世界的な再評価を通過した現在の状況を踏まえると、このアルバムの真価を問うのはいまこそがベストなタイミングなのかもしれません。
『クロワッサン』1127号より
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