パートナーが移住したいと言い出しました【信田さよ子さんのお悩み相談室】
撮影・イラストレーション・椎木彩子 文・長谷川未緒
移住したいというパートナー
飲食店を営む事実婚のパートナーが、東京から地方へ移住して店をやりたいと言い出しました。私は会社員ですし、どういうつもりなのか聞いたら「好きにしたらいい」と。フリーランスでもできる仕事なので、会社を退職して私だけ2拠点生活をしようと思っていますが、子どももいないし、事実婚のまま別居したらどうなるのか不安です。パートナーに対して勝手すぎるという思いも湧いてきます。(50代・出版社勤務)
損をしないように、たまに店に顔を出す程度で。
確かに勝手すぎますね、このパートナーは。事実婚で子どもがいないということなので引き止める理由はないけれど、経済的なことはきちんとされたほうがいいと思います。
これまで彼がご相談者を扶養することはなかったと考えられますし、おふたりはおそらく財布は別で、同棲にかかる費用は同じ金額を出し合って暮らしてこられたのでは? 店の開店資金や移住にかかる費用も、彼に全部自分でまかなってもらい、ご相談者が負担するようなことはないようにしていただきたい。
女性はつい支える側になりやすいものですが、お相手がこれからすることに対しては、何も義務はないというドライな態度で関係を続けていくといいのではないでしょうか。
別居について「不安」と書いておられますが、彼と別れることになると思われているのでしょうか? お相手は「好きにしたら」と言い、「ついて来てほしい」とは言わないあたり、責任が生じることは避けて、パートナーシップのいいとこ取りで生きている。
そういう自分勝手な人が好きということでしたら、別れないで済むように、たまにお店に顔を出したり、手伝ってあげたりしてもいいと思います。
ただしくり返しますが、お相手のために自分の貯蓄を取り崩すようなことは、絶対にやめてください。女性は自分のお金さえあれば、どんなふうになってもなんとかなるものです。
婚姻届を提出せずに夫婦と同様の暮らしを送る事実婚は内縁関係ともいわれ、40代から下の世代では多いんですよね。事実婚では相続人になれなかったり、税制上の優遇を受けられなかったりといったデメリットもありますが、入籍することで被る不利益を避けられます。
たとえば夫の姓に変更することを避けたい働く女性も多いですから、経済的に自立している女性にとっては、事実婚という形を取り、今までどおり仕事をしながら対等な関係でパートナーシップを組むというのは理想的とも考えられます。
ですがこのケースのように、お相手が事実婚の良さだけ取って、入籍していないから責任は取らないということにもなりかねません。入籍するにしても事実婚にしても、メリットとデメリットを率直に話し合い、お互いに納得して選ぶことが大切です。
『クロワッサン』1123号より