東京と京都で2拠点生活、住んでわかった古都の魅力。
撮影・津久井珠美 構成&文・中岡愛子
「自転車でどこにでも行けて、食文化が豊かなところが好き」
東京 → 東京・京都(2拠点) → 【京都】
路地奥の古民家、角打ちスペースをコミュニティの場に。
「大学生の頃から京都が好きだったんです。鴨川ののんびりとした感じとか、歴史が長いのに新しいカルチャーもどんどん生まれて、学生さんも多くて活気があっていいなあって」
もともと「ものづくり」に興味があり、新卒で素材系の商社に入社し、「一番身近なものづくり」と感じた料理の道へ、みずから進んだ真野遥さん。
2020年6月から東京と京都の2拠点生活をスタートし、2023年4月に完全移住。6月に、日本酒と発酵食を中心に角打ちも楽しめる酒屋『発酵室 よはく』をオープンした。
「料理の仕事を始めて、京都は街中から生産地が近くて、食文化が深いなと改めて感じるようになりました。とくに発酵食が根付いていて、先日も上賀茂の直売所に野菜を買いに出かけたら、農家さんが樽からすぐき漬けを直接取り出して渡してくれて。その土地に根付いたものを受け継いで守る人たちがいるのが素敵だなと。料理をする上でも楽しく暮らせそうだと思ったのが、移住を決めたきっかけです」
とはいえ、最初は勇気が出ず、シェアハウスを借りて2拠点生活から。大原に畑も借りてそら豆や菜の花を収穫したり、野菜の移動販売店『Gg’s(ジージーズ)』を営む女性など同世代の知り合いも増え、「京都がさらに好きになって、東京駅に戻るたびに京都に帰りたい」と思うように。
完全移住からほどなく、叡山電鉄の元田中駅からすぐ、築100年近い古民家に白い暖簾を掲げ、訪れる人を「こんにちは」と笑顔で迎える穏やかな日々だ。
セレクトする日本酒は、滋賀や神奈川など真野さんが好きで通う酒蔵のもの。
「お酒が好きで、仕事を通して食中酒としていいなと酒蔵を巡るうちに、発酵自体に興味を持った」という真野さん。本もろこのオイル漬けやへしこなどお酒に合う近郊のつまみをセレクトして販売するほか、自身が常連でもある出町柳の『酒とつまみ蓮』とコラボした「鹿納豆みそ」に熱燗を合わせるなど、角打ちスペースでのペアリングもとびきり楽しい。
「京都の魅力は旬とともに生きる、と感じられること。いろんな人たちとの繋がりで成り立っているお店です」
●京都市左京区田中里ノ前町56
TEL.なし
営業時間:11時〜20時(平日の角打ちは15時〜) 日・月曜休 みそ仕込みなど「季節の手仕事会」(発酵ランチ付き)も開催。
『クロワッサン』1113号より