よく使うものと使わないものを分ける、「バックヤードの収納法」とは?
が、その現実を引っくり返すのは実はモノの〝稼働率〟を検証するという作業だった!
撮影・丹野雄二(部屋写真)、谷 尚樹(人物写真) イラストレーション・オガワナホ 構成&文・堀越和幸
【稼働率と定位置】同じモノでも稼働率によって、 定位置は変わる。
ここで米田家のある特徴的な事象をひとつご紹介したい。それは、この家には本棚が存在しない、ということだ。もちろん、米田さんは本を読まないわけではない。
「ここでも稼働率、ということにこだわっています」
本の稼働率!? つまり……?
「どんなに本を読む人でも月に5冊か10冊というものですよね。ということは、本棚があるとほとんど稼働していないもののために部屋の貴重なスペースを占拠させていることになります。ちょっとした本棚なら前後左右合わせて、畳1畳分はとってしまうはず」
ヘンリー・ペトロスキーの『本棚の歴史』によれば、現代の本棚は、背表紙を見せて蔵書を自慢する中世の文化の流れを汲むものなのだそう。そんな意識(無意識?)を一度ゼロにすれば、「使うところのすぐ近くを定位置にする、というのが片づけの鉄則なので、私は本を家の中で分散させています」
上と下の写真を見てみよう。デスク周りには収納関連の本、洗面所の棚にはバスタイムを利用する読み物的な本、そしてリビングの衣装ケースには仕事関連の本が詰め込まれている。
「本は時折入れ替えて、他の蔵書はダイニングの天袋に押し込んでいます」
【グルーピング】モノはいつ稼働するのか? を考えるグルーピングを実践。
モノの置き場所は使うところのすぐ近くにする――とは前項で米田さんが挙げた片づけの鉄則だが、それをさらに推し進めた発想が稼働性を考えたグルーピングである。
「グルーピングと聞くと、ついモノのカテゴリーで揃えたくなります。見た目は確かにきれいですが、実はこれが意外に非効率的なんです」
例えば玄関に宅配便が届いた。サインをするのに、いちいちペンを取りに居間に走る。案外これがストレスだ。
「グルーピングはモノの種類ではなく、いつそれを使うかのタイミングですると便利です」
異種のモノたちが混ざるが、それでむしろ無駄なアクション数が減る。との理屈から、米田家の靴箱には出かける際の帽子やバッグ、種々のカード類などがまとめられている(下写真)。
「例えば今日のおやつに食べるお菓子やお茶を同じカゴに一緒にしておく、そんなことでもいい。狭い家で右往左往する局面が劇的に減るはずです」
(A)バッグや帽子、本、香水など
(B)帽子など
(C)リュック
(D)ガムテープや紐、軍手、消臭剤、ポイントカードや病院のカードなど
【バックヤードを増やす】バックヤードが不足した時は、3段ボックスを有効活用する。
ゴールデンゾーンには厳選された日常使いのものを、バックヤードには稼働率の低いものを。そうやって実現していく、まるでミニマリストのような片づいた暮らし。とはいえ、収納スペースには限りがある。棚やクローゼットから溢れるものはどうすべきか?
「バックヤードを増やすために私は3段ボックスと衣装ケースを利用しています(下写真)」
米田さんが使っているのはどちらも数千円で買える〈アイリスオーヤマ〉の製品で、衣装ケースに至っては同じものが家に12個ほどあるのだそう。
「デッドスペースや収納スペースなどの奥行きを予め測ってから取り入れると失敗が少ないはずです」
ボックスの中をさらに布帛のケース(こちらは〈無印良品〉)でまとめれば、パッと見の印象も目に涼やか。
「バックヤードは登場回数の低い順番で奥に位置を移動しますが、ベランダにコンテナ、という方法もあります」
ちなみに米田さんがこれを利用しているのは、年に数回しか行わないテニスのラケットやパートナーの野球道具一式、そして防災グッズなどの収納だ。
「それでも、収納が追いつかないという人は、外部のストレージサービスを考えてみるのもいいと思います」
【ストレス対策】2つの領域を機能させるべく、 〝収納ストレス〟をなくすコツ。
頻繁に使うものはできるだけ少ないアクション数で、そうでないものはそれなりに。ゴールデンゾーンとバックヤードの色分けとはとどのつまり、そういう考え方だ。最後に、米田さんからモノを出し入れするのに大切なちょっとした2つのコツを。ここでもアクション数が鍵になる。
「1つめは稼働率の高いものの前にモノを置かない、ということです」
例えば、使用頻度の高い文房具の前に、なぜ写真立てを飾るのか? あなたはいちいちそれを避けながら文房具を手にしているはずだ。触って落とせば、ワンアクションどころではない。
「2つめは、ケースに詰める収納はできるだけ縦置きにしようということ」
お目当てのものを視認したら、あとはワンアクションでそれを抜き出せばいい。これが平置きだった場合を想像してみよう。お目当てに辿り着くまでに何アクションかかることか。
「ちょっとした心がけですが生活がスムーズになる。試してみてください」
『クロワッサン』1103号より