スープ作家の有賀薫さんが堪能、りんご愛あふれる長野・飯綱の美味しい旅。
撮影・三東サイ 地図製作・竹中聡司
「採れたてのりんごでスープを作り、シードルを味わう贅沢。」
アダムとイブの物語以来、りんごは古今東西の文学や歌のモチーフに選ばれつつ、人との関係を紡いできた。そして私もそんなりんごにすっかりとりつかれている一人だ。
新幹線の長野駅から車で30分ほど北に位置する飯綱(いいづな)は、町をあげての「りんご推し」。
りんごとりんごのお酒・シードルに出合うきっかけをくれた思い出深きこの場所へ、7年ぶりにやってきた。
目的はシードルの醸造所、そして実をつけたりんご園を訪ねること。
中でも私のお気に入りは、ブラムリーという英国の在来種の青りんご。そのままでは驚くほど酸っぱいのに、熱と甘みを加えると、酸味が強さに変わる。ポタージュにしても、甘いだけのりんごとは全く違う味わいになるのだ。
まずは今回初めて訪れる、シードル専門の醸造所『林檎学校醸造所』へ。私のシードルの師でもある小野司さんが、数年前に飯綱にUターンして立ち上げた。
可愛らしい校舎の一室(教員室だそう)に、シードルを仕込んだタンクが並ぶ。誰もいないのどかな校庭を眺めつつ試飲するクラフトシードルは、ひんやり甘くて最高。自分の学校じゃなくても、校庭を見ると懐かしい匂いがしてくるのはどうしてだろう。
そしてりんご園へ。歩いていくと目の前に平べったい独特の形をしたりんごの実が。憧れのブラムリー・アップル! ようやく出合えた若い実で、りんごのポタージュを作らせてもらう。
りんごの酸味と香りがさわやかな風を運ぶ。レトロな懐かしさと新しいものへの好奇心が混ざり合った、よき旅になった。(文・有賀 薫)
廃校になった小学校に、お洒落なカフェとシードル醸造所が。
[いいづなコネクトEAST]
地域の拠点として、多くの人が訪れるコミュニティ施設。誰でも無料で利用でき、日用雑貨が買えるコーナーも。
●長野県上水内郡飯綱町赤塩2489
TEL.026・262・1995
営業時間:9時~20時
定休日:毎月最終月曜(祝日の場合は翌火曜)
https://iizuna.jp/iicone-east/
泉が丘喫茶室
りんごなど、自家製タルトが毎日12種類以上も並ぶ。
連日多くのお客さんが訪れる名物カフェ。
「りんごの可能性を毎日考えています」と言うのは、店長の植田麻緒さんだ。大阪で10年カフェを営んでいたセンスが存分に発揮されている。ジビエバーガーなどもあり。
●泉が丘喫茶室
営業時間:カフェ11時~17時(ランチ~14時、イートイン16時30分LO)
定休日:月曜
TEL.026・253・3211
https://www.instagram.com/izumigaoka.tart/
林檎学校醸造所
シードルの魅力がぎっしり。ぜひ飲み比べをしてみて。
「甘みと酸味、渋みのバランスが大事。組み合わせによって何種類ものシードルが作れます」と小野さん。
8月に収穫が始まり、翌年3月頃までずっと搾汁、醸造。自社製品のほか、委託でオリジナルも。
●林檎学校醸造所
営業時間:11時〜16時(ショップ)
詳細はHPで確認を。https://shop.5gaku.com 通販も可能。