暮らしに役立つ、知恵がある。

 

「目につかない場所は諦める」「朝15分」、一田憲子さんのシンプルな片付けのルール。

とにかく物を減らし必要最低限だけ残す、そんなミニマリストになる必要はないと思うのです。片づけるという作業は、自分の生活をいかに快適に、気持ちよくするか、にほかなりません。人それぞれ必要なもの、大切なものは違うはず。
だから、片づけや整理のやり方もいろいろあっていい。
大切なのは、そのスッキリを無理なく続けること。まずは暮らし上手の人の話に耳を傾けて。

撮影・黒川ひろみ 文・石飛カノ

目につかない場所は諦め、目に見えるところだけ。

心地よく暮らすために片づける。
心地よく暮らすために片づける。

暮らしをテーマに長年、編集・ライターの仕事に携わってきた一田憲子さん。さすが、自宅のリビングはご覧のようにシンプルで清々しい。片づけの極意を尋ねると、「こんな自分でも続けられること」を探すことだという。

「素敵な暮らしぶりの人たちを取材して、真似をしては挫折して。40代くらいになって“根が几帳面ではない私はあの人のようにはなれない”ということが分かってきたんです」

そこで原点に立ち返った。自分は一体何のために片づけるのか?

「それまではものを細々分けて引き出しの中の中まできれいにしなくちゃと片づけのための片づけみたいになっていました。でも自分の本音を探ってみたら、気持ちよく心地よく過ごせさえすればいいってことに気づいたんです」

ごはんを食べるときにテーブルの上がごちゃごちゃしているより、きれいに片づいていて好きな器が並んでいたほうが気持ちがいい。じゃあテーブルの上だけ片づければいいのでは? 見えるところだけきれいにしておけば心地よい暮らしはできるはず。

「たとえばチェストの上の引き出しに鍵とかボタンとか細々した生活雑貨をポイポイ放り込むようにしています。外見はなんとなくきれいなんですけど、中はぐしゃぐしゃ。何でも突っ込んじゃうから半年くらい経つと引き出しが開かなくなってくるんです(笑)。
そうなったらいよいよ中のものを整理する。見えないところまで頑張ろうとすると結局すべて面倒くさくなって、今度は見えるところまで散らかってきます。見えないところを手放すと見えるところがきれいになるという感じですね」

「目につかない場所は諦める」「朝15分」、一田憲子さんのシンプルな片付けのルール。

1時間根をつめるより毎日15分の片づけを。

今年になってから新たな片づけのルーティンを取り入れたという一田さん。

「もともと朝起きたら30分のウォーキングと15分のストレッチをしてから洗濯機を回すという習慣がありました。今年からは洗濯機を回している間に拭き掃除をするようにしたんです」

洗面所の床から始まって、ふきんを替え、食卓の上、チェストの上、書斎のデスク、キッチンのカウンターをささっと拭く。そのとき散らばった書類やDMがあればいるいらないを判断して整理したり処分したり。かかる時間は約15分。

「片づけだけだとできないけれど、拭き掃除とセットになっているとできる。○○するついでに○○するなら続けられるということが分かると習慣づけしやすいと思います。それで家の中が一度何もない状態になるとすごく気持ちがいい。その気持ちよさを経験するとますます習慣づくような気がします」

ポイントは朝一番というタイミングと15分という短すぎず長すぎない時間設定。

「朝起きたては意識がクリアでカラダも疲れていないので、やる気スイッチが入りやすいと思います。だからといって、ついでに掃除機をかけるとなると30分かかるので面倒になってしまう。だから掃除機をかけるのは午後にして拭き掃除は15分で終わらせます。1時間かけていろいろ掃除するより1日15分だけ拭き掃除と片づけをするほうが楽だと思いませんか?」

「目につかない場所は諦める」「朝15分」、一田憲子さんのシンプルな片付けのルール。
  • 一田憲子 さん (いちだ・のりこ)

    編集者

    フリーライターとして女性誌や単行本の執筆を手がける。ライフスタイル誌『暮らしのおへそ』(主婦と生活社)を企画編集。自身のサイト「外の音、内の香」主宰。https://ichidanoriko.com

『クロワッサン』1075号より

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