自宅や周辺の危険度を知っていますか? おさえておきたい防災の心得。
撮影・黒川ひろみ イラストレーション・山本由実 文・一澤ひらり
1.家の耐震基準を確認したことはありますか?
1981年に建築基準法の耐震基準が大きく改正され、建築物は「震度5強程度の地震で軽微な損傷、震度6から7の地震でも倒壊を免れる強さであること」が義務化された(新耐震基準)。
「1995年の阪神・淡路大震災では、死者の約7割が家屋倒壊などによる圧死で、被害の多くが旧耐震基準の家に集中していました。今住んでいる家が中古住宅なら1981年以前に建てられた家かどうかを、確認してみてください」
もし旧耐震基準の家なら、自治体の耐震化担当部署に相談しよう。
2.高層マンションに住む人はこんなことに気をつけよう。
「免震対策をしているマンションは比較的安全ですが、エレベーターが使えなくなるなど、被災後は不便な点が出てくると思います」
ことに高層階に住んでいる人は給水や支援物資を取りに行くのに、非常階段を使って往復しなければならないので、日頃の備えを充分にしておくことが大前提に。
「マンションによっては防災備蓄をしているところもあるので、管理組合などに確認してみましょう。それと困った時は助け合うという共助の関係を住人たちと作っておくことも大きな力になります」
3.住まいの安全対策は、 まずは〝お片づけ防災〟から。
「自宅では避難動線を確保することが大事です。避難しなければいけない時に、モノが散乱して玄関までたどりつけない家ってけっこうあるんですよね。避難経路に何も倒れてこないように、対策しておくことは防災の基本ですね」
部屋の出入り口に背の高い家具を置くと、転倒して避難できなくなるので置かない。家具や家電には転倒防止対策を施す。こうした安全対策は必ずやっておくこと。
「地震でモノが散乱すると避難しづらくなるだけでなく、ケガや事故につながるリスクが高くなります。普段の片づけこそが、防災の第一歩と心得ましょう」
4.ハザードマップで我が家の危険度をチェックしよう。
ハザードマップは、それぞれの地域で起こる災害を予測し、被害範囲を記した地図。
「大きな被害をもたらした2018年の西日本豪雨、倉敷市真備町で起きた大規模水害はハザードマップの浸水想定区域と重なっています。
今年7月の熱海市伊豆山地区で起きた土石流も土砂災害警戒区域に含まれていました。ハザードマップは過去の災害データも踏まえ、信頼性が高いです。
自分の居住地と職場のエリアに関しては、ハザードマップでどういう災害に弱いのかをチェックして、その対策を立てておくことが、災害から身を守る助けになります」
5.風水害時の「垂直避難」についての心得は?
大雨で冠水しやすいマンションの1階に住んでいる場合は、上に逃げる〝垂直避難〟が最善の行動。
「上の階の知り合いに声をかけて、そこに避難させてもらいましょう。今はセキュリティの問題もあって、よその人を入れたくないという気持ちが強いので、知り合いか、知り合いでないかの差は大きいです。ゴミ出し時の挨拶とか、子ども同士が友だちとか、そういうことが災害時には反映されますから、日頃のおつきあいは大事ですね」
戸建てなら玄関は閉めたままで、2階に貴重品を持って移動しよう。
6.水害時に車で避難してはいけない。
「冠水している状態で車での避難はNGです。避難途中で車が水没して亡くなるケースが多いんです。
水深10cmでブレーキが利きにくくなり、30cmでエンジン停止、50cmで車が浮いて流され始めます。その時点でドアも開かなくなってしまうので、脱出ハンマーは備えておいてください」
また、アンダーパスやガード下は周囲より低くなっているので、わずかな時間で水没しやすく、非常に危険。また、橋や川沿いは急激に増水して巻き込まれることも。車は水に弱いと、肝に銘じよう。
『クロワッサン』1052号より