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60歳以降のすこやかな仕事術。収入は小さく、長く、無理をせず。

長く楽しく収入を得られるなら、それこそ長寿時代の最大の幸運。
シニアからの理想の働き方、一緒に考えましょう。

イラストレーション・佐々木一澄 構成と文・小沢緑子

人生100年時代といわれる今、定年延長も盛んに論じられ、一体いつまで働き続けるのかと、暗澹たる気持ちになっている人もいるのでは?

「シニア世代に現役時代と同様の働き方は必要ありません。老後、贅沢はできなくてもごく普通に幸せに暮らせるレベルで考えるなら、シンプルに『人生最期まで生活費が赤字にならない』ことを目指せばいいと思います。

生活費は公的年金の範囲内で賄うことが前提となりますが、試算すると(下記グラフ)、現役時代のように頑張らなくても、60歳以降、70歳くらいまでゆるく働いて月に約5万円程度の収入を得れば自由に使えるお金が増え、生活により彩りが添えられます」と、ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さん。

さらに収入を得た分、国民年金を70歳からの繰り下げ受給にすると、年金額が65歳で受け取るより42%増額に。

「女性は男性より長生きでおひとりさま老後を送る可能性が高いので、将来の医療と介護の備えのために、年金額を増やしておくと心強くなります」

ではどんな働き方を考えればよい?

「60歳以降は利益や出世といったことから解放され、肩の力を抜いて、地域や社会に貢献する働き方を選べるのがよさ。現役時代とは違い仕事を大きく成功させる必要もないので、お金の面でいえば人を雇わない、借金をしなければ私はOKだと思います」(井戸さん)

身の丈に合った働き方や起業相談にのる中小企業診断士の滝岡幸子さんによると、

「シニアで自分の好きなことを仕事にしている人は、50代を準備期間ととらえて行動している人が多い。自分が60代、70代となった時にも働ける場所を作り、環境を整備するための期間なんです」

そのベース作りに役立つ重要なキーワードを次に紹介するので参考に。

60歳以降の入ってくるお金の例

(C)Mie Ido,All Rights Reserved.
(C)Mie Ido,All Rights Reserved.

妻が専業主婦、同い年で会社員の夫は60歳の定年で退職金を得て、その後、額は減るものの65歳まで再雇用で収入を得るケースで作成(ただし、生活費は現役時代の7割程度に抑え、住宅ローンや子どもへの援助はなしとする)。

夫の厚生年金が出ない60〜65歳の間、さらに65歳以降はゆるく働いて月5万円、1年で合計60万円の収入を得れば、貯蓄を取り崩さなくても彩りのある生活を送ることも可能。共働きならさらに余裕が生まれる。

【60歳を超えても細く長く稼ぐ! 実現のための4つのポイント。】

1.コミュニティを作る、参加する。

「60歳以降、好きなことを仕事にして働いている人に共通するのは、まず“人とのよいつながり”があることです」と、滝岡さん。

現役時代の仕事仲間とのゆるやかなつながりのほか、趣味のサークルの人脈も活きてくる。

「それまでの会社関係や、家族、友人とは違う、いわゆる〝第4のつながり〟なので、新しい自分や役割を発見し、潜在的なエネルギーを発揮できる可能性があります」

また、地域のネットワークもこれからは有力なキーワード。

「アフターコロナの働き方は、地域密着もどんどん進んでいくと思います。居住する地域の集まりなどに意識的に参加し、顔なじみを増やしコミュニティを広げておくのはおすすめです」

60歳以降のすこやかな仕事術。収入は小さく、長く、無理をせず。

2.興味があった分野の資格をとる。

これまでの仕事の経験に、新たに興味があった分野の資格を取得し、キャリアの掛け算をする手も。

「資格は今、さまざまな分野に広がり種類も豊富。きちんと体系だった知識が得られるので、60歳以降の仕事の可能性を広げるために取得しておくのはありだと思います」(滝岡さん)

現在の仕事のジャンル以外にも実はたくさんの資格を保有しているというのが井戸さん。

「年齢とともに確かな健康の知識が必要だと思い、最近取得したのは発酵マイスター。実用には結びつかないかもしれませんが、目標があるのはよいこと。それに講習に参加すると興味の方向が似た人とのつながりができるので、最初は何かお手伝い程度でも、声をかけられるうちに仕事につながる可能性もあると思います」

60歳以降のすこやかな仕事術。収入は小さく、長く、無理をせず。

3.副業からゆる起業。

定年後に長く働くには雇われるより、マイペースで働けるシステムを自分で作るほうが雇用先に左右されない働き方ができる。

「ただ、いきなり起業といっても軌道に乗せるまでは手間も努力も資金もかかります。2019年頃から企業が社員に副業を解禁したり、逆に副業ワーカーの雇用を推進する流れが出てきています。この時流に乗って現役時代から本業の傍ら、やりたいことをいくつか掛け持ちし、相性を見ながら自分ができる範囲を広げ、最後に残った副業を長く続ける方法も」(滝岡さん)

たとえば、会社員×起業を見据えた副業、主婦業×趣味の延長の副業、派遣社員×貯金のための副業、収入源のアルバイト×一番やりたいことなど、掛け持ちのパターンは多様。

60歳以降のすこやかな仕事術。収入は小さく、長く、無理をせず。

4.オンラインの活用もあり。

オンラインもこのご時世、利用価値は大。苦手意識は今こそ克服を。

「プロとアマチュアの境が見えにくい今、好きなことをSNSで発信し続ければ仕事につながることもあります。あるいは得意なことを他人に提供できるスキルシェアサービスに登録すると腕試しにもなり、世間のニーズも測れるはず」(滝岡さん)

「ハンドメイドやエクササイズなど、得意とする分野のサークルやワークショップを<Peatix>といったイベント管理や集客ができるアプリを利用して告知をする人もいます。参加費1回1,000円でも数人集まれば少しは収入になりますし、口コミで参加者が今後増えることも。オンラインでコツコツ発信し続けることが大切だと思います」(井戸さん)

60歳以降のすこやかな仕事術。収入は小さく、長く、無理をせず。
  • 井戸美枝 さん (いど・みえ)

    ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士

    年金や経済についてのわかりやすい解説が人気。著書に『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』など。

  • 滝岡幸子 さん (たきおか・さちこ)

    中小企業診断士、経営コンサルタント

    ポテンシャル経営研究所代表、起業家支援の「ひとり起業塾」主宰。著書に『女子の副業 夢もお金もあきらめない。』など。

『クロワッサン』1048号より

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