日記で自分を客観視する。藤原しおりさんの日記ライフを拝見。
撮影・黒川ひろみ 文・野尻和代
「10年書き終えた時の自分の未来がとても楽しみです」
「もともと文房具好きなのですが、特にノートには目がなくて。中でも一番効率よく文字を埋められるのが日記。ついぎゅうぎゅうに書いちゃうんですが、ページが文字で埋め尽くされる様子もたまらなく好き。使い切った!という達成感があるんですよね」
そう語る藤原しおりさんの日記歴は、小学校4年生にまで遡る。
「それまでも適当な紙に気持ちを書いたりしていたんですが、ノートにきちんと記し始めたのは小学校4年生の時。ただ、かなり気まぐれに書いていたので、4年かかって1冊を終えました。その後、たまたま3年日記を店頭で見かけて、好奇心で購入。中学2年生の元日からつけ始めたのですが、これが私の性格と合っていたようで、高校2年生からも2冊目をつけていました」
けれど、大学2年生になり、3冊目に突入してしばらくたった頃。突然、長年の日課となっていた日記が書けなくなり、やめてしまった藤原さん。
「いろんなことがあり、少し鬱っぽくなってしまって。生活も不規則になって、全てに無気力な時期でしたね」
そんな藤原さんが、改めて日記を書くことを再開させたのは2018年。「ブルゾンちえみ」として活動し、多忙を極めていた真っただ中のことだ。
「2017年にデビューして数カ月経ち、それまで経験したことのない日々を送っていて、これを書き留めておかないともったいないと思ったのがきっかけです。とりあえずはスケジュール帳を使っていたんですが、2018年の元日から、腰を据えて、10年日記を書き始めることにしました」
日記に感情を吐露することで自分を見失わずにいられた。
まるで聖書のような分厚さに一目惚れしたという10年日記は、一日ひと見開き展開で10年分を記す形式。一日あたり書く量は、たった2行だという。書き始めるにあたって藤原さんが決めたのは、左ページには一日にあった出来事の流れを、右ページには、その日の感情のハイライトを簡潔に綴ること。
「3年日記を改めて見返した時に、出来事をただ記すより、感情を綴っているほうがおもしろいなと。10年日記の場合、毎日過去を振り返りつつ、同時に未来の自分も意識する。だから余計に、現時点の思いを書くことにしたんです」
10年日記をつけ始めて今年で3年目。「ブルゾンちえみ」としての活動と卒業、そして本名で新たなスタートを切るなど、30歳を前に目まぐるしい変化を経験している藤原さん。そんな中、日記は気持ちを整理し、自分を客観視するツールになっているという。
「私はこういうことをすると苦しくなるんだとか楽しいんだとか、わかってくるんです。あと、2018年、2019年の5月の日記を読むとすごくしんどいと綴っているんですが、ずっと同じじゃないんですよね。2年前はただしんどくて、1年前はそれを変えようともがいて、今年はそこから解放されていた。それを読んだ時、我ながら、成長してるって感動しちゃいました」
感情や出来事以外にも、誰かに言われてうれしかったこと、誰かが言ったすてきな言葉も書き留めていて、時々読み返しては救われているという。
「自分が好きなフレーズは、何年経っても変わらないですから。日記って、私にとってはタイムマシンでもあるし、物語のようなエンタメ要素もあるけど、何より自分を取り戻すためのカルテなんだなと実感しています」
藤原しおり(ふじわら・しおり)さん●タレント。今年4月より「ブルゾンちえみ」から改名。Instagram、note、YouTubeを活用し、環境保護やSDGsとエンタメなどを併せた情報や活動を発信。イタリア留学を準備中。
『クロワッサン』1026号より
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